社会のルールが変わる? 人に罰を与えても効果がないことが判明

science_technology 2017/12/29
Credit: Photo-ac

ゲームをする時の人の行動を研究した結果、懲罰を与えても協力を促す効果がないことがわかりました。

この研究は、人間社会において協力関係がどのように発展し、関係の構築に影響するかを調べたもので、罰をルールとして加えても、人はゲームそのもののやる気を失ったり、合理的判断をしなくなってしまうようです。

Punishment diminishes the benefits of network reciprocity in social dilemma experiments
http://www.pnas.org/content/early/2017/12/15/1707505115

人間社会は、人と協力的関係をつくることにより人間関係の安定を維持しています。しかし、協力関係を維持するには時間的・金銭的なコストがかかります。

たとえば、グループの他のメンバーに危険が迫っていることを知らせるために警報を鳴らすとします。すると警報を鳴らすために時間を費やすため、自分が逃げる時間が減ることになります。個人は本質的に利己的ですが、なぜこのような場合に協調性を選択するのかはわかっていません。

理論研究では、罰を与えることは人々が協力するための手段とみることができます。この研究の理論で、国際研究者のチームは日本の北海道大学のMarko Jusup氏と、中国の西北工業大学のZhen Wang氏が「社会的ジレンマ実験」を行いました。このチームは、懲罰を選択できるものとした場合に全体の協力関係のレベルを向上させることができるかを研究しました。

実験に使われたのは有名な「囚人のジレンマ」というゲーム。これは、各々自分にとって一番魅力的な選択肢を選んだ結果、協力した時よりも悪い結果を招いてしまうというゲーム理論です。今回は225人の学生を3つの試験グループに編成し、それぞれ50回のゲームの中で得点を競います。

Credit: Pixabay

学生たちは、「協力的」「非協力的」を選択でき、学生とその二人の対戦相手が「非協力的」を選んだ場合、学生が得るポイントは0。すべての人が「協力的」を選ぶと、4ポイントがもらえます。学生が「非協力的」を選び、対戦相手が「協力的」を選んだ場合は、学生は8ポイントを得ることができます。個人が同じ相手と数回戦う場合には、対戦相手と協力することで、より多くの点数が稼げるというルールです。

グループ1は、すべての学生が一つのゲームごとに2人の相手と対戦し、対戦相手はゲームごとに変わります。

グループ2では、最初のグループ1と同様のゲーム内容ですが、50回のラウンドの間対戦相手は変わらないので、お互いの人格を知ることができます。

グループ3では、グループ2と同様で相手は同じままですが、「相手を罰を与える」という新しいルールが追加されます。懲罰を選ぶと、罰を与えた人は点数が下げられ、罰を受けた人はさらに大きく点が減らされるというルールです。つまり、「協力的になってくれないと私はあなたに罰を与えますよ」というメッセージであり、人々は減点を恐れてより協力的になるだろうと推測されていました。

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しかし驚くことに、懲罰をオプションに導入したグループも決して協力的ではありませんでした。対戦相手が頻繁に変わるグループでは、協力的な態度は最も低く4%で、対戦相手が変わらない場合は、38%という結果でした。そして懲罰ルールを加えたグループ3は、グループ2よりも平均点が大幅に少なかったのです。ただ興味深いのは、グループ3はグループ2と比較して、離脱者が少なかったことです。これは一部のプレイヤーが、離脱すると処罰するという対応をとったためと見られています。

米国科学アカデミー紀要に掲載された研究結果には、「これは、『私はあなたに協力的であって欲しい』というメッセージを含んで誰かを罰しているというよりも、『私はあなたを傷つけたい』というということを暗に示している」と掲載されています。

「総体的にみると、懲罰は士気をさげる効果があると見られます。数回に渡り罰を受けた人は、短時間ですが最終的にもらえる報酬のことをほとんど忘れてしまうようです」と研究者は説明します。つまり、罰によってプレイヤーがゲームに対する興味を無くしてしまい、残りの試合を合理的な戦術で戦わなくなるのです。

それでは、なぜ懲罰が人間社会に広く浸透しているのでしょうか?
「『敵を罰すると快楽を感じる』ということが、人間の脳に習慣回路として備わっているのではないか」「しかし現実世界では、支配者側に報復を誘発させることなく罰する権限があります」と、Jusup氏とWang氏は説明しています。

今回の研究は、人間社会における協力のあり方について貴重な洞察を提供していますが、チームは実験の設定をはるかに超えた研究の意味を推測することは賢明ではないとアドバイスしているようです。

 

体罰の是非などが問題になっている今、社会のあり方が問われるところです。

 

via: phys.org / translated & text by nazology staff

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