予言されていた幻の粒子「マヨラナ粒子」を発見。量子コンピューターへの応用に期待

quantum 2018/07/14

Point
・電荷的に中性で、それ自身が反粒子でもあるというフェルミ粒子の一種、マヨラナ粒子の存在が予言されていた
・凝縮系において、磁場に直行して熱流が曲げられる熱ホール効果を利用してエッジにおける熱伝導の量子化を観測
・量子化が半倍数性であることがマヨラナ粒子の性質と一致

物質を構成している陽子、中性子、電子といった粒子を、フェルミ粒子と呼びます。80年前、イタリアの物理学者エットーレ・マヨラナが、それ自身を反粒子とするフェルミ粒子の存在を予言していました。

この予言されたフェルミ粒子は、電荷を持ちえない中性フェルミ粒子です。現在マヨラナフェルミオンとして知られていますが、根源的な興味を引くだけでなく、量子コンピューターへの応用も期待できます。

素粒子の中にマヨラナフェルミオンを見つけることは、非常に困難です。しかし今回、2つの非常に異なる凝集物質系における熱伝達実験において、マヨラナフェルミオンのようにふるまう現象を発見したと、京都大などのグループが12日付の“Nature”で発表しています。

Majorana quantization and half-integer thermal quantum Hall effect in a Kitaev spin liquid
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0274-0

凝縮物質系には励起が含まれ、通常の素粒子として振る舞いますが、そのシステムを構成している実際の素粒子と似た振る舞いをするとは限りません。例えば、超電導(もっと限定するとトポロジカルな超電導)のような現象では、凝縮物質系内では電子は電荷を一時的に「忘れた」状態になることができます。

その結果、電子はその反粒子である陽電子と区別できなくなり、この電子の空白はホールと呼ばれます。トポロジカルな超電導が固体物質に固有の特徴であるのか否かは、未だに未解決です。しかし、この現象の鍵となる側面はある凝縮物質系においては真似ることができ、マヨラナフェルミオンの出現に必要な環境を生み出せます。

ワイツマン科学研究所のバナジー氏らは、量子ホール効果を示す凝縮系のエッジにおいて、マヨラナフェルミオンの証拠を探しています。量子ホール効果とは、低温で強い磁場の存在下では物質の直交する電気コンダクタンスが量子化し、不連続な特定の値を示すようになるという効果です。彼らは、このコンダクタンスが基本単位の5/2倍になる特殊な状態に注目しました。この状態の実質的な性質は未だ議論の対象ですが、フェルミオンの複合体による超電導状態であるということに異論はありません。

一方、京大准教授・笠原裕一氏らは、塩化ルテニウムの一形態であるα-RuCl3を調査。この物質は、キタエフ量子スピン液体として知られる相を持つと考えられています。キタエフ量子スピン液体とは、絶対零度まで下げても磁気スピンが整列しない特別な物質の状態です。α-RuCl3は電気的な絶縁体であるにもかかわらず、キタエフ量子スピン液体の磁気的特質の記述は、トポロジカルな超伝導体と数学的には同等です。そのため、マヨラナフェルミオンがα-RuCl3のエッジに存在するはずです。

凝縮系におけるマヨラナフェルミオンの直接の検出は決して簡単になることはありません。これらの粒子は電気的に中性であるので、電気伝導に加わることはできません。しかし、マヨラナフェルミオンは電流を伝えませんが、熱は運べます。

電子は電気と熱の両方を伝えることができます。その結果、多くの自由な電子を持つ金属はふつう、熱伝導体として優れています。このアイディアは、ウィーデマン・フランツの法則として公式化されていて、電気伝導率は熱伝導率を温度で割った値に比例します。

そして、もし金属中の粒子の動きが散逸せずに弾道的であれば、電気伝導も熱伝導も量子化し、伝達モードの数に比例します。各電子モードは、熱伝導のユニットとしても使えます。電子の場合は整数倍です。そして大事なのが、各マヨラナモードの場合、量子化が示す倍数が半ユニットになるということです。バナジー氏らも笠原らも、この分数値の量子化した熱伝導を凝縮系のエッジで観測しています。

電気が流れない絶縁体で、熱ホール効果と量子化が確認できたことから、電荷を持たない粒子によってこの効果がもたらされたことが示唆されました。さらに量子化が分数値であったことからも、マヨラナフェルミオンがそれを担っていたと考えられます。

これらの実験を行った温度は、バナジーらの系で20mK、笠原らの系で5Kでした。これよりも低い温度だと分数値の量子化は見られなかったということで、温度が低すぎると系の相が変わってしまうことが示唆されます。このように、比較的高い温度で量子化を実現できていることから、量子コンピューターへの応用が期待されます。

 

via: Nature/ translated & text by SENPAI

 

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