「幽霊粒子」と呼ばれる銀河系外ニュートリノの発生源がついに解明される

space 2018/07/13
Credit: Icecube / NSF / アイスキューブによってニュートリノを検出する観測所のイメージ
Point
・南極のアイスキューブ観測所が、2012年に高エネルギーのニュートリノを検出した
・2017年の観測から、この高エネルギーニュートリノが40億光年先のブレイザーから来ていることを特定
・同じ天体が高エネルギーの宇宙線の発生源になっていることが他の天文台の観測で確認される

銀河の外からやってきた高エネルギー宇宙ニュートリノの発生源が、ついに特定されました。

研究は2つの論文にまとめられ、13日付でScience誌に掲載されています。

Multimessenger observations of a flaring blazar coincident with high-energy neutrino IceCube-170922A
http://science.sciencemag.org/content/361/6398/eaat1378Neutrino emission from the direction of the blazar TXS 0506+056 prior to the IceCube-170922A alert
http://science.sciencemag.org/content/361/6398/147

「幽霊粒子”ghost particle”」と呼ばれる神秘的な粒子が検出されたのは、2017年の9月22日。これはブレイザーと呼ばれる高エネルギーの天体から、40億光年もの旅を経て私たちの地球に届いたものです。

この発見の意義は、高エネルギーニュートリノの発生源がブレーザーであると確認できたためだけでなく、新たな研究分野・マルチメッセンジャーニュートリノ天文学が確立できたということでもあります。この分野では、一つの現象を多種多様な検出器を使って総合的に研究しますが、似たようなテクニックは重力波に関しても使われていて、衝突する中性子星を撮影し、特定するという素晴らしい成果をあげています。

Credit: u-tokyo/ 宇宙を構成する物質はすべてクォークとレプトンからできている

銀河系外からの高エネルギーニュートリノは、2012年、南極の氷を活用した南極点にあるニュートリノ観測所・アイスキューブによって初めて検出されました。そしてそれ以来、高エネルギーニュートリノの存在は研究者たちを悩ませ続けることになりました。

素粒子自体変わり者ではありますが、ニュートリノほど変わった素粒子はありません。なぜなら、その質量はゼロに近く、光速に近い速度で進み、通常の物質と相互作用することは極めて稀だからです。何十億ものニュートリノが現在もあなたを素通りしているのです。ニュートリノにとって宇宙は、幻そのものに過ぎません。そのため、「幽霊粒子」などと呼ばれています。

Credit:Nicolle R. Fuller / NSF / IceCube / ニュートリノが透明な南極の氷の中で相互作用すると、アイスキューブ検出器を通過する際に微量の青色光を放つ二次粒子が生成される

とはいえ、ニュートリノは全く物質と相互作用できないわけではありません。氷と相互作用して光を放出することができるので、実は「アイスキューブ」によって検出が可能です。

Credit: IceCube Collaboration / NSF

アイスキューブ観測所は、南極の氷の下に掘られた穴に検出器を何千台も並べたものを設置。暗闇の中でニュートリノが氷と衝突したとき、放出される光子を検出することができます。実際アイスキューブは、これまでもいくばくかのニュートリノを検出しており、ずば抜けた結果を残しているとのこと。

これはエネルギーが普通の検出結果よりも高く、非常に遠い距離から飛んできたものであることを示していました。1987年に天の川銀河のハローで起こった超新星爆発のニュートレイは、36メガ電子ボルトでした。2012年に観測されたものは、1ペタ電子ボルトを超えており、これはエネルギーにして1億倍以上です。

9月に観測されたものはこれよりもエネルギーは若干低く300テラ電子ボルトでしたが、強力であることに変わりはありません。そして、ニュートロンにとって宇宙は存在しないも同然なので、その軌道は相互作用を受けず一直線となります。この特性によって、何百もの科学者による研究チームは、この素粒子がどこから来たのか特定できました。その発生源はTXS 0506+056と呼ばれるオリオン座の肩に位置する40億光年先のブレーザーでした。また、陽子や原子核からなる高エネルギーの宇宙線が同じ位置から来ており、このニュートリノと関係があることもわかりました。

Credit: DESY, Science Communication Lab / 活動銀河核のイメージ。超巨大ブラックホールから吹き出す高エネルギージェット

ブレーザーはクエーサーの一種で、銀河中央の超大質量ブラックホールが物質を貪ることで、膨大な量のエネルギーを放出しています。ブレーザーの銀河の面は私たちの方向を向いており、ジェットもまさに私たちに向かって放出されています。2017年の検出時、研究者たちは過去のデータも合わせて解析し、2014年と2015年にも同じ場所からニュートリノが来ていたことを見つけました。

この発見は、NASAのフェルミガンマ線宇宙望遠鏡とカナリア諸島のMAGIC望遠鏡で確認され、電場スペクトラムでの観測は7つの天文台で行なわれました。高エネルギーニュートリノの発生源がブレーザーであり、高エネルギーの宇宙線がそこから来ていることが、独立した観測で確認されたのです。

研究者は今後「天体内部でどうエネルギーが受け渡されているのか突き詰めていきたい」と話しています。また今後観測数が増えれば、ブラックホールの活動解明が進むことも期待されます。

 

via: Science Alert/ translated & text by SENPAI

 

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