謎が謎を呼ぶ「宇宙膨張率」! 最強タッグ・ハッブル&ガイア宇宙望遠鏡の観測における矛盾とは

space 2018/07/17
天文学者はこれまで、世界で最も強力な宇宙望遠鏡ハッブルとガイアを使って宇宙膨張率を測定、計算してきた
Point
・宇宙の膨張率であるハッブル定数は、初期宇宙の宇宙マイクロ波背景放射から求める方法と、望遠鏡による観測で天体との距離を決めることで求める方法の2つがある。
・この2つの方法で得られたハッブル定数の間には乖離が見られる
・その乖離は、ガイアにより観測が精密になることで、さらに深まった

現在、宇宙の膨張率は、宇宙望遠鏡とシナジー効果を使った2つの方法から、正確な値が導き出されています。しかしその2つの結果には、不思議な乖離が見られるようです。

これは、宇宙の根底には新しい物理法則が横たわっている可能性をほのめかしています。可能性としては、ダークマターの相互作用の強さや、ダークエネルギーが考えられているよりもずっとエキゾチックであること、そして宇宙にまだ知られていない粒子があることなどです。この最新の結果は、7月12日付の“Astrophysical Journal”に掲載されています。

ハッブル宇宙望遠鏡

NASAのハッブル宇宙望遠鏡と欧州宇宙機関(ESA)のガイア宇宙望遠鏡による観測を組み合わせることで、138億年前のビッグバンから宇宙を膨張させてきた割合である「ハッブル定数」が、一層精密になりました。しかし、その値が正確になればなるほど、ESAのプランク衛星によって別の方法で求められるハッブル定数の値との不一致が明確になるのです。

プランク衛星はビッグバンから36万年後に現れた原初の宇宙のマップを作りました。全天にマイクロ波で符号化されたビッグバンの痕跡が刻みつけられています。プランク衛星はこのビッグバンの僅かな変則によって生み出された宇宙マイクロ波背景放射(CMB)におけるさざ波の大きさを測ります。このさざ波は、どれだけダークマターや通常物質が存在するかや、当時の宇宙の軌道、様々な宇宙パラメーターを符号化しているものです。

これらの測定は、どのように初期の宇宙が進化したのかを予想するのに役立っています。しかしこれらの予測値は、近くにある現在の宇宙の新しい測定値とは異なっていました。

「この新しいガイアとハッブル宇宙望遠鏡のデータを加えることで、宇宙マイクロ背景放射のデータとの“緊張”は深刻なものになっています」と語るのはプランクチームのメンバーで、Kavli Institute for Cosmologyのジョージ・エフスタシウー氏。

理論通りであれば、宇宙マイクロ背景放射のデータから標準理論を使って予測された膨張率と、ハッブル望遠鏡とガイアによって得られたデータによる膨張率は一致するはずです。しかし、実際はその乖離は観測能力が上がると共に確実なものとなってきているのです。

ハッブル宇宙望遠鏡とガイアによって得られたデータから求められたハッブル定数は、73.5キロメートル毎秒枚メガパーセク(km/s/Mpc)です。その意味は、330万光年離れるごとに、73.5km/s速くなるということです。宇宙は遠い星ほど速いスピードで遠ざかっています。一方CMBから求められるハッブル定数は、67.0km/s/Mpcです。

CMBによらないハッブル定数を求めるには、「宇宙の距離梯子」を使います。梯子の各段階における外へのスピードを求めることで、ハッブル定数を決めるのです。梯子のある段では、ケファイド変光星を使って距離を求めます。ケファイド変光星は明るさが規則的に変わる変光星です。その本来の明るさと変化した明るさを比較することで、距離を求めることができます。ハッブル宇宙望遠鏡でその明るさを測定して距離を求めていましたが、ガイアが測った視差速度から求められた距離を加えることで、測定の精度を上げることができたのです。

ガイアによって今までの測定を再評価することができるようになり、現在のハッブル定数の不確かさは2.2%ですが、研究チームは2020年代までには1%まで縮めることを目標としています。一方で、天体物理学者は初期の宇宙の物理学についての再検討に取り組み続けるでしょう。

 

via: Phys.org/ translated & text by SENPAI

 

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