なぜ「怖いのに楽しい」のか?ジェットコースターの心理学

science_technology 2018/08/19

遊園地の定番アトラクション、ジェットコースター。特に最近のジェットコースターは、科学技術の発展とともに速度や高さ、カーブなどが進化し、よりスリルを感じられるアトラクションになっています。

しかし、ジェットコースターには事故や脳卒中、脳の歪みなど危険もあります。また、一度体験するために長蛇の列に並んで数時間も費やしてしまうことも。

そんなデメリットもあるジェットコースターですが、なぜ私たちはジェットコースターに惹かれ、スリルを得ようとするのでしょうか?

ジェットコースターに惹かれる理由の一つに、人間がもつ内臓が浮くような感覚を味わいたいという願望があります。内臓が浮くような感覚は、人に恐怖を抱かせます。その恐怖は体内の心拍数を上げ、浅い呼吸となり、エネルギー消費量を増加させるのです。これまでの研究から、ジェットコースターの乗車により心拍数の上昇が報告されています。これは、闘争・逃走反応といった、筋肉がより速く、強く動けるように緊張状態になる「火事場の馬鹿力」に近い状態です。

ジェットコースターのような恐怖感が味わえるバンジージャンプの研究では、アドレナリンが放出して覚醒状態になることや、幸福感が得られることが報告されています。また、血中の神経伝達物質エンドルフィンが上昇して強い高揚感を得ることができます。このことから、安全が確保されている状況での恐怖感は、非常に高い幸福感をもたらしてくれるものだとわかります。

しかし、バンジージャンプでは幸福感を得ると同時に、ストレスとなるコルチゾールも増加します。そのストレスは、幸福感をマイナスするものなのでしょうか。実は人は、幸福感とストレスを同時に経験すると、ストレスをポジティブなものと捉えるようになります。特に高揚感はストレスの中で人が見出すポジティブな感情の一種です。なので、ストレスがかかるといっても全てが悪影響だとは限らないのです。

オランダ人心理学者が行った研究によると、ジェットコースターのストレスはポジティブなものだと報告されています。研究者らはストレスが喘息患者の症状をひどくさせることから、喘息患者がポジティブなストレスを受けるとどうなるか実験しました。

研究者らは喘息をもつ学生ボランティアをテーマパークに連れて行き、ジェットコースターに搭乗させて呼吸器官の働きを調査しました。その結果、叫び声や動乱から肺機能は低下しましたが、同時に息切れの感覚も低下していました。これは、ジェットコースターのストレスがポジティブなものであることを示しています。

Photo on Visual Hunt

ただし、ジェットコースターはすべての人が楽しめるわけではありません。バンジージャンプの研究では、より強い高揚感を得られるのは体内のエンドルフィン量が多い人だという研究結果が報告されています。

また最近の論評では、ドーパミンの役割が注目されています。ドーパミンは神経伝達物質で脳の報酬経路にとって重要な物質です。ドーパミンレベルが高い人は刺激欲求も強いことが判明しています。

一連の研究から、ジェットコースターのような強烈な刺激を楽しめるか否かは各人の体内化学物質の差にあるといえるでしょう。

また、年をとってもジェットコースターに魅力を感じるのかという疑問がありますが、実際に研究されたことはありません。しかし、異なる年代の人がスリルのある体験にどれほど参加するのか調査する研究は行われています。その研究によると、参加は成人早期にピークを迎え、10年経つごとに低下するようです。これは、高齢になるとスリルのあるジェットコースターのような体験には参加しなくなることを示唆しています。

なぜ私たちがなぜジェットコースターに惹かれるのか、その要因を絞り込むことは難しいです。しかし、ジェットコースターによる闘争逃走反応、生理的な刺激から連想されるポジティブな影響のおかげで私たちは楽しむことができているようです。ジェットコースターは一般的に安全管理がなされており、興奮状態を経験できる比較的安価な手段。もし、幸福感や高揚感を味わいたくなったときはジェットコースターに乗ってみましょう。

 

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via: Smithsonian.com / translated & text by ヨッシー

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