遺伝子編集技術CRISPRに「遺伝子変異や損傷」を引き起こす可能性が指摘される

biology 2018/07/21

Point
・革新的な遺伝子編集技術CRISPR/Cas9を応用するため多くの研究が進んでいる
・CRISPR/Cas9の影響で標的外の遺伝子に変異が入ったり、大きな欠失がゲノムに現れることがわかる
・CRISPRを遺伝子治療に応用する場合、このような悪影響を妨げる工夫が必要となる

遺伝子操作技術CRISPRは、現代科学において最も重要なブレークスルーの一つだと言われています。中でも昨年、元NASAの生化学者が、筋肉増強のために自分の腕にCRISPRを注入したことは話題になりました。

しかし、7月16日、“Nature Biotechnology”で掲載された新たな研究は、「CRISPRは潜在的に危険な副作用を持っている可能性がある」と警鐘を鳴らしています。

Repair of double-strand breaks induced by CRISPR–Cas9 leads to large deletions and complex rearrangements
https://www.nature.com/articles/Nbt.4192

マウスや人の細胞におけるCRISPR/Cas9の遺伝子編集の系統的な調査において、現存のDNAテストでは検出し得なかった広範囲の変異やゲノム損傷が頻繁に起こることがわかりました。「これは、治療上関係のある細胞にCRISPR/Cas9で編集を行った結果起こった、予想外のイベントの最初の系統的な評価です」と説明するのは、イギリスの遺伝学者アレン・ブラッドレー氏です。

「DNAへの変化が今までひどく軽視されてきていたことがわかったのです。」

実は、科学者がCRISPRについて警鐘を鳴らしたのはこれが初めてではありません。昨年の5月、コロンビア大学のチームが、遺伝子編集によってゲノムに標的外の変異が数百も入る可能性があると報告しています。これらの主張は、研究に関わった科学者が結果を再現できなかったことで取り下げられましたが、他の研究者も、CRISPRには危険な副作用の可能性があると示唆しています。

これらの可能性をさらに調べるため、ブラッドレー氏と共同研究者は、この技術の効果をマウスの幹細胞と、人の網膜上皮細胞で検査しました。

最初の実験では、CRISPR/Cas9を遺伝子活性を研究する道具として使用。しかしそこで、何か予期していない事態が発生していることが明らかになりました。研究者によると、「系統的に調べていた遺伝子の広範囲な再編成に気づくと、他の遺伝子や治療上関係のある細胞系譜も確認し、CRISPR/Cas9による影響が本物であるとわかりました」

それらの影響の中には、大規模な欠失や、CRISPR/Cas9が標的とした配列から数千塩基対も遠く離れた場所の変異もありました。こういったDNA暗号の重大な変異は、健康な遺伝子や細胞機能を妨害することで、有害な効果を持つ可能性があるだけでなく、標準的なDNA遺伝型解析ではこういった遺伝子の誤りを見つけることができない可能性があると、研究者たちは警告します。

遺伝子編集による治療では、多くの細胞が影響を受けることは必至です。そしてその細胞の中に重大な遺伝子、例えばガン遺伝子に影響が及んだ幹細胞が出た場合、健康への被害は甚大になることもあります。CRISPRを実用化するためには、さらなる研究によって、CRISPRによる悪影響が防止可能なのかを調べる必要があるでしょう。

 

via: Science Alert/ translated & text by SENPAI

 

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