街=マッドサイエンティスト? 都市が生物の「新種」を作り出している

animals_plants 2018/07/29

街は「マッド・サイエンティスト」

サッカー欧州No.1の国を決める「ユーロ2016」の決勝。フランス対ポルトガルの試合は「思わぬゲスト」を招いてしまうことになります。セキュリティ上の理由により前日から点灯していたライトに「大量の蛾」が集まってしまい、本番のピッチに多くの「招かれざる客」が降り立ちました。

一番のハイライトはポルトガルの大スター、クリスティアーノ・ロナウドが負傷してピッチに座り込んだシーン。1羽の蛾が彼の額に張り付き、世にも珍しい「泣きっ面に蛾」状態を作り出したのです。

Credit: Getty Images

しかし、大量発生した蛾に罪はあるのでしょうか?

彼らは自然界には存在しない、まばゆい光につられてスタジアムに誘われただけであり、その原因を作ったのは明らかに私たち「人間」です。

人間が住む街は、例えるなら「マッド・サイエンティスト」。人工的なライト、大気汚染などのあらゆる要素を「るつぼ」に入れて溶かし、混ぜ合わせてクレイジーな生態系を創り上げます。

生物学者は、もはや「新種発見」のためにガラパゴスに行く必要はないと言います。新種は今や、私たちが住むこの「街」において生まれつつあるのです。

環境に適応する動物たち

人間が作り上げたその「不自然」な環境は、実際に動物たちにどのような影響を与えているのでしょうか?

仙台のハシボソガラスは、人間の営みをうまく利用している種の一つです。彼らはなんと、道路にわざと「くるみ」を置き、車を「くるみ割り機」として上手に使っているのです。

イギリスのシジュウカラは、中の牛乳を飲むために牛乳瓶のフタを開ける方法を学習しました。驚いた製造業者がフタを金属製に変えたところ、今度は金属をつついて穴を開けられてしまったのでした。

メキシコでは、スズメが巣作りのために好んで「タバコの吸い殻」を集めていることが分かりました。単に心地よかったのか、ニコチンに含まれるダニやノミを寄せ付けない作用を知っていたからなのかは分かりません。

ツバメの翼が「短く」なった悲しき理由

人間が創り上げた環境は、単に動物の「行動」に影響を与えているにとどまりません。

アメリカの研究者たちは、高速道路の橋の下に巣を作るツバメの翼幅が、1980年台と比べて約2ミリメートル「短く」なっていることを発見しました。何でもないような違いですが、その深い「意味」を示すデータがあります。

道路脇で死んでいたツバメの死体の翼幅は、幸せに飛び回っているツバメと比べて、約5ミリメートルも「長い」ことが分かったのです。そして、交通量は変わっていない(むしろ増加傾向)にも関わらず、道ばたのツバメの死体はおよそ90%も減少していました。

鳥の「翼の長さ」は、その種の生活様式と密接に関係しています。長い翼が長距離を直線的に飛行することに適しているのに対し、短い翼は、素早いターンや急に飛び立つようなシチュエーションに適しています。

すなわち、ツバメは猛スピードの車を避けるために、翼が短くなるように進化していたのです。言い換えれば、「長い翼」が遺伝子プールから除外されたことになります。

この例からわかるように、動物は最も生存の可能性が高くなるように環境に適応していきます。そして、その環境を目まぐるしいスピードで変化させているのは、我々人間。私たちはその責任の重さを改めて自覚しなければいけないと言えるでしょう。

 

via: theguardian / translated & text by なかしー

 

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