真菌と細菌の絶え間ない「戦争」が土壌のゲノム研究で明らかに

biology 2018/08/03

Point
・人間活動の影響を受けていない世界の1,450地点から58,000の土壌サンプルを採取
・土壌中の微生物のゲノム情報を包括的に調べた結果、細菌と真菌の間に対立関係が明らかに
・真菌は抗生物質作って細菌を殺すものがおり、細菌はその抗生物質に対抗する遺伝子を広める傾向がある

土壌は生命に満ちあふれ、栄養サイクルや炭素源として重要な働きを担っています。それがどのように働いているのか詳細に調査するため、EMBLとタルトゥ大学が率いた国際チームが、土壌中の真菌と細菌の研究を初めて世界規模で行いました。

その結果、栄養の奪い合いや抗生物質の生産において、互いに優位に立とうとする絶え間ない戦いが行われていることが分かりました。研究はまた、土壌への気候変動の衝撃を予想したり、農業での自然の土壌組成を上手に使う助けとなるでしょう。研究は“Nature”で発表されています。

Structure and function of the global topsoil microbiome
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0386-6

土壌のマイクロバイオーム研究では、研究者たちはその手を汚す必要があります。5年間かけて世界中の1,450の地点から58,000の土壌サンプルが集められました。採取場所は、農業といった人間活動の影響を受けていない場所を注意深く選択。解析で得られたゲノムデータセットは14.2テラバイトにも及びます。1,450地点の内、世界的に重要な熱帯雨林やツンドラなど、全大陸に及ぶ189地点についてはより詳しい解析が行われました。

地球規模の微生物戦争

この研究で発見された何百万もの遺伝子の内、たった0.5%だけが、腸や海で見つかったデータの存在する遺伝子と重複していました。

「未知の遺伝子の量は圧倒的でした。しかし、はっきりと正体がわかった遺伝子から、土壌における細菌と真菌の地球規模での戦いが示されました」と述べるのはEMBLのリーダーで責任著者であるピア・ボーク氏です。

一般に、多くの真菌が生息する土壌では細菌の多様性は低くなっていました。チームはまた、細菌中の抗生物質耐性遺伝子の数と、真菌の量の間に強い関係があることも発見。特に、ペニシリンのような抗生物質を生産する真菌では顕著だったとのこと。

「このパターンは、細菌との戦いで真菌が抗生物質を生み出し、対応する抗生物質耐性遺伝子を持った細菌だけが生き残れるという事実から、うまく説明できるでしょう」

「真菌と細菌の間の対立は、細菌集団の全体の多様性に影響し、抗生物質耐性の遺伝的レパートリーを決定します」とタルトゥ大学のモハマド・バラム氏は言います。この情報は、異なる環境系で抗生物質耐性を引き起こす遺伝子の拡散と、どういった経路で人の病原菌まで達するのかを予想するのに使えるでしょう。また、高いレベルの自然の抗生物質生産真菌のいる場所を予測し特定する助けにもなるでしょう。

地域的違い

チームはまた、細菌と真菌の分布の地域的な違いも発見しています。細菌はどこにでもいますが、穏やかな気候の温帯では最も広い遺伝的多様性があります。気温のような環境因子は、その相対的な量をほぼ決めています。細菌は暖かくて湿った環境を好むことが多いのです。

一方、真菌はツンドラのような涼しくて乾いた気候を好むのが普通です。大陸間での生息数の違いを伴う、地理的な制限を受けている傾向もあります。

つまりこれらのことがほのめかしているのは、栄養サイクルへの細菌や真菌の相対的な貢献は世界で異なっており、地球規模の気候変動はその組成や機能を異なったものにするかもしれないということです。

人類の活動の影響

人の影響を受けていない地域の土壌データと、農地や庭の芝のような人の影響を受けている地域のデータを比較すると、細菌と真菌、抗生物質の比率は完全に異なっています。

科学者によると、自然のバランスのこういった変化は、おそらくは地球上の多くの進化よりも進んでいるとのこと。ただ、この変化は土壌のマイクロバイオームへの人類活動の影響も示しており、その結末は今の所わかっていません。

しかし今後、土壌中の真菌と細菌の相互作用についてより詳しく理解することで、農業において肥料を削減することができるようになり、その結果、自然環境における有益な細菌が生き延びる機会を増やせるかもしれません。

 

植物と窒素固定細菌との共生関係、たびたび解消されていたことがわかる

 

via: Phys Org/ translated & text by SENPAI

 

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