「宇宙で最も冷たい点」を宇宙で作成! 「重力」を量子力学で解明へ

space 2018/08/07

Point
・国際宇宙ステーション(ISS)に低温原子実験室(CAL)が設置される
・CALはボース=アインシュタイン凝縮(BECs)を生み出し、地上よりも長時間保つことができる
・BECsと重力の相互作用を観察することで、微視的な重力理論が発見される可能性

宇宙を支配する「4つの力」。研究者たちはこれまで数十年に渡って、4つの力がどのように相互作用しているのか理解に努めてきました。

これらの力の内3つ(電磁気力、強い核力と弱い核力)が微小環境でどのように働くのかは、量子力学で説明できます。一方で、一般相対性理論は、物質が巨視的な環境でどのように振る舞うのか(重力)を説明するものです。しかし、微視的な重力は未だ解明されていません。

極小サイズで重力が物質とどのように相互作用するのかを理解するために、科学者たちはいくつかの最新の実験法を開発してきています。その中の1つが、NASAの低温原子実験室(CAL)で、国際宇宙ステーション(ISS)に積まれており、最近、ボース=アインシュタイン凝縮(BECs)として知られる原子の雲を生み出すことで研究の道標となりました。

Space Station Experiment Reaches Ultracold Milestone
https://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?release=2018-180&rn=news.xml&rst=7202
Credit: NASA / JPL-Caltech / 絶対温度に近づくにつれて(左から右)原子の雲の密度が変化

BECsが軌道上で作られたのはこれが初めてであり、物理法則の探求への新たな機会がもたらされたことになります。BECsは71年前にサティエンドラ・ボースとアインシュタインによって予言された物質の状態で、絶対零度のわずか上という極低温の原子からなります。この状態では理論上、原子の動きは完全に止まるはずです。それらの素粒子は状態が継続し、正確に制御されているため、量子現象を研究するための理想的な実験場となります。極低温では原子は粒子としてよりも波として振る舞う傾向があり、複数の原子が同じ波を示す1つの大きな原子のように振る舞うため、研究しやすいのです。

Credit: NASA / JPL-Caltech / Tyler Winn / 国際宇宙ステーションに設置されたCAL

そしてそれこそがCALの目的であり、微小重力環境で極低温の量子ガスを使って研究を行うのです。重力の正確な測定を行い、極小環境での物質との相互作用を研究する助けとなるように設計されています。

実際にCALでBECsが生み出せることは、すでに確認されています。ルビジウムの原子の雲の温度を100ナノケルビン(nK)まで下げました。この温度は絶対零度(0K または-273℃)からわずか0.0000001Kという極低温であり、全宇宙の平均温度である3Kよりも冷たいのです。

低温を作るため、CALの容器内に磁場や集中させたレーザーで摩擦のない「原子トラップ(atom trap)」を作り、その中に原子の雲を保持します。レーザーで固定することで冷やされた原子雲は、開放されて減圧することでさらに温度が下がり、長時間冷やされた状態を保てるのです。地上ではトラップを解除すると重力が原子に働き、すぐに動き出すため、BECsは1秒も保てません。

しかし、微小重力のISSでは重力の影響による熱の発生が少ないので、BECsを5秒から10秒間観察することができます。しかも、それを何度も繰り返して一日に6時間までの測定ができるのです。また、CALは地上のEarth Orbiting Missions Opereation Centerから操作できるので、ISSで働く宇宙飛行士の手を煩わせることもありません。

CALの科学実験のための本格稼働は9月上旬からで、3年間続く予定です。世界中の研究チームがこの装置を使う準備ができており、多くの実験が行われます。CALによって、微小スケールでの重力の働きが研究者達によって解明されるのも時間の問題かもしれません。

 

 

via: Science Alert/ translated & text by SENPAI

 

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