AやB型の血液を「O型に変えてしまう」酵素を発見

biology 2018/08/22

Point
・輸血用の血液は、型の不一致で必要な時に不足することがある
・赤血球の表面にはA型の糖鎖とB型の糖鎖があり、それを除くことで普遍的に使えるO型の血液へ
・人の腸内細菌の持つ遺伝情報を包括的に調べ、これらの糖鎖を除去できる酵素を発見

ブリティッシュコロンビア大学の研究者らが、献血された血液をどの血液型でも共通に使える血液に変えることに成功したことがアメリカ化学学会第256回国際ミーティング・展示会で発表されました。

現在、世界で1年間に1億1千2百50万回も血液が提供されています。しかし輸血用の血液は血液型が合わないと使えません。体内の免疫系が、自分の血液型と異なる型を持つ血液を異物とみなして凝固させてしまうからです。

主要な血液型にはA型、B型、AB型とO型がありますが、では一体何がこれらを決めているのでしょうか。それは、血液の表面に現れる糖鎖です。糖鎖の種類は、A型の糖鎖とB型の糖鎖の2種類があります。A型の血液はA型の糖鎖のみを持ち、B型の血液はB型の糖鎖のみを持ちます。そしてAB型は両方の糖鎖を持ちますが、O型だけは糖鎖を持ちません。

糖鎖は免疫システムが認識する抗原となりますので、自分の持っている糖鎖意外の糖鎖を抗原と認識することになります。つまり、AB型の人は両方の糖鎖を抗原としないため、すべての血液型の輸血を受けることが出来ます。逆に、O型の血液は抗原となる糖鎖を全く持たないので、すべての血液型の人に輸血可能な「ユニバーサル血液型」なのです。

血液不足解消への道のり

型の不一致による輸血血液の不足を解消するために、科学者たちは長く血液を操作する研究を行ってきました。その中に、「糖鎖を持つ血液の糖鎖を除去することで、O型のユニバーサルな血液を作る」というアプローチがあります。このアプローチで先駆的な成功を収めたのが、1982年に発表された研究です。

焙煎前のコーヒー豆から得られた酵素を使って、赤血球からB型の糖鎖を除去できたという研究で、この操作でB型の血液をO型に変えることができます。ただしこの酵素が活性化するための条件は、非常に厳しいものでした。一端血液を調整する必要がある上に、酵素活性も強くないため、実用するためには多量の酵素が必要となりコストがかかるのです。

しかし、この発見を手がかりに、多様性の高い細菌の酵素の中に、同様の効果を持つものが探索されました。2007年、2つの細菌の酵素を組み合わせることで、効果的にA型とB型の両方の糖鎖を除去できる方法を発見。この酵素の効率は、B型糖鎖ではコーヒーから見つかったものよりも数千倍も高いものです。しかし、A型の糖鎖を実用的に除去するには、大量の酵素が必要でした。

今回の研究概要 鍵は腸内細菌

数年前、ブリティッシュコロンビア大学の生化学者ペーター・ラフィールド氏と、ステファン・ウィザース氏は、探索する細菌として人の「腸内細菌叢」に白羽の矢をたてました。腸内細菌が糖の分解に特化していることが理由です。腸壁には糖で修飾された蛋白質が並んでおり、その糖鎖はA型やB型の糖鎖に似ています。腸内に住む多くの細菌の持つ酵素をできるだけ網羅して探索するため、メタゲノミクスという方法が取られました。これは環境中からDNAを直接採集し、その中に含まれる「すべてのDNA」をシンプルに研究するという方法です。これによって、腸の外では増殖できないような細菌の酵素も、同じように扱うことができます。

ラフィールド氏らは、約20,000の異なる遺伝子断片を調べ、A抗原、B抗原を模した単純な糖鎖に対してテストを行いました。その結果、A抗原に対して活性を持つ11の酵素の候補と、1つのB抗原に対する候補を発見。その中には、2007年の発見よりも30倍A抗原に対して活性を持つ物が1つ含まれていました。この新しい酵素は、様々な温度や塩分濃度の環境でも活性を失いません。そして、このA抗原に対する酵素と以前見つかったB抗原に対する酵素を組み合わせることで、すべての血液型の血液をO型の血液型に効率的に変えるツールを作り上げることに成功したのです。

とはいえ、実用にはまだ問題もあります。糖鎖除去のために加えた酵素を、取り除く必要があるのです。これらの酵素はA型やB型の糖鎖に特異的であるとはいえ、未知の機能を持った糖鎖と相互作用する可能性があります。また、これら酵素は人体にとっては異物なので、免疫システムが反応する可能性があります。またRh型には対応していないため、完全にユニバーサルなものとはいえません。Rh型の抗原は糖鎖ではなくタンパク質なので、別のアプローチが必要となるでしょう。

この技術が実用段階まで成熟して、輸血用の血液の不足が解消される未来が来ることを期待しましょう。

 

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via: Smithsonian.com/ translated & text by SENPAI

 

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