人の脳にだけ存在する神経細胞を特定

brain 2018/08/29

Point
・ヒトのマウスの脳細胞の違いはその大きさと洗練度だけであると考えられていた
・ヒトの抑制性神経細胞の電気シグナルと発現遺伝子の解析を組み合わせることで、「ローズヒップニューロン」がヒトで特異的な脳細胞であることを発見
・「ローズヒップニューロン」が精神病と関わりを持つ可能性

脳障害の治療などの際、なぜマウスでは成功してヒトで失敗するケースがあるのでしょうか?この問いに、一つの答えが導き出されました。

国際研究チームが「人には存在するが、マウスには存在しない神経細胞」を特定し、論文が8月27日付で“Nature Neuroscience”に掲載されています。

What Makes A Human Brain Unique? A Newly Discovered Neuron May Be A Clue
https://www.nature.com/articles/s41593-018-0205-2

論文の著者であるアレン脳科学研究所のエド・レイン氏は、「この特別な種類の細胞は、他の生物種では未だに記述のない特徴を持っています」と述べています。また、自閉症からアルツハイマー型痴呆、統合失調症などの脳疾患においても新たな情報がもたらされたことになります。

精神疾患を完全に理解するには、ヒトにだけ存在する特別な神経細胞へのアクセスが必要です。研究者たちはこれまでも、ヒトにだけ存在する神経細胞をいくつか提唱してきました。しかし、これらの細胞はどれも他の生物種で見つかるか、あるいは証拠が確信の取れないものばかりでした。

今回の研究に重要な役割を果たしたのは、あるハンガリーの研究所でした。彼らが研究しているのは、「抑制性神経細胞」。車でいうブレーキの役割をしている神経細胞で、他の脳細胞にスピードを落とすように命令しています。これらが機能不全になると、統合失調症のような神経精神医学的な病気につながります。

彼らが亡くなった男性の大脳皮質から採られた抑制性神経細胞の電気シグナルを記録したところ、非常に特徴的な種類の細胞に気づきました。それはさながら、花びらが落ちた後のバラの花のようだったとのこと。そこから、今回発見された脳細胞が「ローズヒップニューロン」と名付けられました。

そして偶然にも、アレン脳科学研究所も全く異なるアプローチでこの細胞を特定していました。この方法なら、人の脳細胞でスイッチが入る遺伝子を検出できます。そこで研究者たちはこれらの結果を組み合わせて、ローズヒップ細胞が抑制性神経細胞の明確なサブタイプであることを実証したのです。

この発見は、ヒトの脳がマウスの脳に比べて単に大きく、洗練されただけであるとする古い説に挑戦するものです。少なくとも1種類の脳細胞は、マウスには存在せずにヒトにだけ存在することがわかったのです。

しかし科学者たちにとって、ローズヒップ細胞は未だ謎めいた存在です。脳の特定領域における情報流通の制御に関わっているのではないかといわれていますが、はっきりとはわかっていません。その正確な機能はおいても、ローズヒップニューロンの発見は脳研究に大きな意味合いを持ちます。その1つが、ヒトにおける機能や病気の明確な要因を研究するためにマウスを使うことの有用性に関する疑義です。また、ローズヒップニューロンが抑制性神経細胞であることから、精神病において役割を持っている可能性があります。

しかし、今回見つかった神経細胞も、猿やチンパンジーといった霊長類で見つからないとも限りません。ローズヒップニューロンの特定は、オバマ大統領によって謳われた「BRAINイニシアチブ」の一部でもあり、注目度の高い研究です。脳障害治療が劇的に改良される可能性もあり、今後の研究の進展が期待されます。

 

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via: NPR/ translated & text by SENPAI

 

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