レム睡眠を持たず「夢を見ない」マウスを開発、レム・ノンレム睡眠の長さを調節する遺伝子が発見される

brain 2018/08/29

Point
・レム睡眠やノンレム睡眠を調節している遺伝子がマウスにおいて特定される
・Chrm1を持たないマウスはレム睡眠が減少し、Chrm3を持たないマウスはノンレム睡眠が短くなる
・Chrm1とChrm3の両方を持たないマウスはレム睡眠がほぼ消失するが、生きのびている

人間や動物にとって不可欠である「睡眠」。特にレム睡眠は、「動物が夢を見ている時の状態」として知られており、健康な精神と生活を維持するのに重要な役割があることが知られています。

しかし、その分子的メカニズムについてはよくわかっていませんでした。しかし今回、理化学研究所生命機能科学研究センターが率いた国際研究チームが、動物のレム睡眠やノンレム睡眠の長さを調節する1組の遺伝子を特定。研究結果は“Cell Reports”で掲載されています。

Muscarinic Acetylcholine Receptors Chrm1 and Chrm3 Are Essential for REM Sleep
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(18)31200-2?

睡眠は動物の行動において共通に見られる重要な役割を持っています。哺乳類や鳥といった高度な脊椎動物では、睡眠には典型的な2つの段階があります。睡眠中に眼が高速で動いている状態であるレム睡眠と、ノンレム睡眠です。

レム睡眠中の脳は、起きている時同様に活発に動いており、この時に記憶が強化されるといわれていますが、レム睡眠を調節する基本的な分子因子はわかっていませんでした。しかし今回の研究で、レム睡眠の調節に関与している2つの基本遺伝子を特定。この2つの遺伝子を実験的に取り除いたノックアウトマウスでは、レム睡眠の量が検出できないほど劇的に減少していました。

過去の研究では、神経伝達物質のアセチルコリンとその受容体が、レム睡眠の調節に重要であることがわかっています。しかしどの受容体がレム睡眠の調節に直接関係しているのかはわかっていませんでした。

今回の研究では、最新の遺伝子ツールを用いて、マウス遺伝子の改変や遺伝子スクリーニングを行い、睡眠の異常を引き起こす抑制因子の発見を目指しました。そして様々なアセチルコリン受容体を取り除いたノックアウトマウスを作った結果、2つの遺伝子Chrm1とChrm3の受容体がなくなった場合に睡眠時間が短くなることが判明。

Chrm1をノックアウトするとレム睡眠時間が減り断片化します。一方でChrm3をノックアウトするとノンレム睡眠が短くなっていました。そして両方の遺伝子をノックアウトすると、レム睡眠をほとんど行わなくなりましたが、それでもマウスは生きていたのです。

筆頭共著者である丹羽 康貴氏は、「この実験で驚いたのは、マウスがほぼ完全にレム睡眠を失っているにもかかわらず生きていたことです。この発見により、レム睡眠が学習や記憶といった生物の根本的な機能に重要な働きをするのかどうかを確認することができるでしょう」と話しています。

今回の発見は、これら2つの受容体が睡眠の調節、特にレム睡眠に必須で、それぞれ異なった様式で機能していることを強く示唆しています。「Chrm1とChrm3がレム睡眠の鍵となる役割を担っているという発見は、その細胞的、分子的メカニズムの研究に新たな扉を開き、今まで矛盾的で神秘的なものであったレム睡眠という状態を定義できるようになるでしょう」と上田教授は述べています。

 

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via: Medical press/ translated & text by SENPAI

 

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