暗黒物質を探せ。対消滅による「ダークフォトン」探索プロジェクトが開始 自然界の第5の力に迫る

quantum 2018/09/04

Point
・暗黒物質や暗黒エネルギーといった宇宙の90%以上を構成するダークセクターはまだ発見されていない
・陽電子をダイヤモンドの薄膜に衝突させて対消滅させる実験が予定されている
・質量のあるダークフォトンが生み出されれば、生み出されるエネルギーに異常が観測されるはず

2012年にLHCでヒッグス粒子が発見されて以来、量子物理学者たちが同じくらい興奮するニュースはそれほどありませんでした。しかし大きな施設の代わりに、今、小さな研究室が博打的な実験を加速させています。

科学者たちが、自然界の「ダークフォース」を探す意欲的な研究を立ち上げようとしています。もし暗黒物質や暗黒エネルギーが見つかれば、宇宙に広がる目に見えない世界の扉が開かれるでしょう。

今月、イタリア国立核物理学研究機構にある「陽電子対消滅暗黒物質生成実験」、通称Padmeという装置が稼働される予定です。これは自然界の第5の力を探索するために設計された装置で、この第5の力が、暗黒物質を構成する素粒子の振る舞いを決定している可能性が考えられています。

現在わかっている自然界の力は、4つしかありません。電磁力、強い力、弱い力、そして重力です。電磁力は視界を生み出し、スマホをつなぎ、私たちが椅子をすり抜けないようにしている力です。また、強い力がなければ、原子核の内側は崩壊してしまいます。弱い力は放射能を調節しているし、重力は私たちを地上に結びつけています。そして今回発見が試みられているのが、未知の力である「第5の力」です。

Credit: lnf.infn.it / Padme実験装置

Padmeが記録するのは10分の1ミリ厚のダイヤモンド薄膜に、反物質である「陽電子」の流れを照射した時、何が起こるのかということです。陽電子はダイアモンドの薄膜に衝突すると即座に電子と融合して消滅し、エネルギーの爆発となります。通常、このエネルギーの放射は2つの光子として生み出されます。しかし、もし5つ目の力が自然界に存在するなら、異なる現象が起きます。2つの目に見える光子が生成される代わりに、1つの光子と「ダークフォトン」と呼ばれる物質が生み出されることがあるのです。この奇妙な理論上の素粒子は、ダークセクターにおける光子です。それは、暗黒電磁力に相当するものを運びます。

Padme内で生み出されたダークフォトンは通常の光の粒子とは異なり、装置の計器では検出できません。しかし、そのエネルギーおよび照射された陽電子と、結果として出てきたものを比較することで、目に見えない素粒子が生み出されたかどうかがわかり、その質量を算出できるのです。通常の光子は質量がありませんが、ダークフォトンは違います。Padmeで探すのは、電子の50倍ほど重たい物質なのです。

物理学者たちにも、ダークセクターがどれほど複雑なのかほとんどわかっていません。新しい力は存在しないかもしれないし、暗黒物質そのものは、重力のみで形作られたった一種類の素粒子でできているのかもしれません。あるいは新たな見えない素粒子や力が、発見されるのを待っているかもしれません。真実は誰にもわからないのです。

「私たちは全神経を尖らせて、闇の中を撃っています。しかしもし撃たなかったら、チャンスさえないのです」と、研究に携わったローマ・ラ・サピエンツァ大学の研究者マウロ・ラッジ氏は述べています。

 

暗黒物質の正体といわれる「アクシオン」を検出可能な測定装置が完成

 

via: The Guardian/ translated & text by SENPAI

 

SHARE

TAG

quantumの関連記事

RELATED ARTICLE