人の動きは「量子」でわかる? 「群集」の行動を量子集団の数理モデルで予測してみた研究

quantum 2018/09/30

Point
・量子モデルのために生み出された理論を、密集した群衆にあてはめ、その行動を予測することに成功
・研究はまず、ハエの集団を使って行われ、その後政治集会のモデルでも当てはまることを確認
・個々人の感情を調査すること無く数理モデルで、その感情まで関数として予測できた

一見何の関係もなさそうな「すばやく動く電子」と「イベントで集まった人々」。しかし量子力学における研究で、これらをつなぐことに成功しました。

物理学を研究者しているトーマス・アリアス氏が、生物集団の行動を予測するのに高い確度の数理モデルを作成。しかしそれに用いられた方法は、意外にも「量子論的に相互作用する電子大集団の研究に用いられた方法」でした。この研究は、ヒトの行動研究において大きな影響をもたらす可能性があります。研究成果は、“Nature Communication”で発表されました。

Density-functional fluctuation theory of crowds
https://www.nature.com/articles/s41467-018-05750-z

今回の研究は、群衆のコントロールに役立つと考えられています。例えば群衆が多くなった場合、そのムードの度合いによっては暴動が起こる場合があります。それをカメラによる動画や、スマートフォンの位置情報などから群衆の密度を測定することで、事前に察知することができるのです。

具体的には、公共の場に集まった群衆の映像データを使って、極端に押し込められた中で人々がどのように広がっていくかを予測するものです。また、スマートフォンアプリで密度の変動を測ることで、現在の行動状態や群衆のムードを計測し、群衆が危険行動へ移行すると思われる場合は早期警報を出すシステムを作ることもできます。

群衆の中の個人間の相互作用は複雑で数学的に定量化するのは難しいです。群衆中の多くの人々は、複雑な数学的問題をもたらします。研究者たちは、単純な密度の測定を使ってその背後にある相互作用を推測し、その相互作用を使って新たな行動を予測、そして群集の行動を予想をすることにしました。量子力学において、互いに作用を及ぼし合う多数の粒子の運動状態を論じる力学を扱う多体物理。今回は、その多体物理から枝分かれした、密度汎関数理論(DFT)のアプローチと数理概念を「群集の行動」に適応しました。

この理論をテストするにあたり、研究者らは、歩いているフルーツバエ(Drosophila melanogaster)を使ってモデル系をつくりました。まず最初に数学的な方法で、どれだけハエが環境中で別の場所を好むのかという「イライラ」関数と、どれだけ群れても気にせずにいれるかという「フラストレーション」関数を抽出しました。その基になったのが、周りのハエが増えた時の密度の詳細な変化です。それから、一匹のハエの完全に新しい環境での観察を、これらの情報に混ぜて合わせることで、新しい環境でどのようにして大きなハエの集団が広まっていくのかを、実験前に正確に予測できることを示しました。彼らはまた、群衆全体の行動の変化も追いました。たとえば、その「ムード」とは、「フラストレーション」関数の社会的好みの変化を追跡したものです。

個々人は、ベストな立ち位置(典型的にはステージの近く)に位置しようとする一方で、混み合った場所は避けます。一方、新しくもっと良い場所が開放されると、そちらに向かって動くのです。

アリアス氏は、「この数学的発見は驚くべきことです。イライラやフラストレーションの正確な値が、ただ群衆がうろついているその密度の変化を観察しただけで、即座に自動的に得られたのですから。これまでの、人々に対して様々な場所でどのように感じたかの聞き取り調査は、必要なかったのです」と話しています。

 

一人ひとりの行動は予測が難しくても、群衆となると予測できてしまう可能性があるようです。ミクロの世界が、人間の感情を伴うものを説明できしまうのは驚くべきことですね。

 

 

via: Science Daily/ translated & text by SENPAI

 

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