人間が長距離ランナーになったのは古代のたった一つの遺伝子変異が原因だった

biology 2018/09/16

Point
・ヒトは他の動物に比べるて長距離走れる能力があることが知られている
・CMAH遺伝子を欠損したマウスを調べた所、運動能力の改善や酸素利用能力の向上が見られた
・ヒトにはCMAH遺伝子が元々欠損しているため、長距離ランナーとしての能力を持ったと考えられる

動物界でも稀有な長距離ランナーであるヒト。もしある遺伝子が存在したままだったら、その生態は劇的に変わっていたようです。

“Proceedings of Royal Society B”で発表された研究によると、USサンディエゴ・スクール・オブ・メディスンの研究者らは、CMAHと呼ばれる遺伝子の機能を喪失させたマウスを研究しました。その結果、CMAH遺伝子の機能喪失が、ヒトの長距離ランナーとしての能力を支えている可能性があると判明しました。

Human-like Cmah inactivation in mice increases running endurance and decreases muscle fatigability: implications for human evolution
http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/285/1886/20181656

CMAHに変異が入ったのと同じ時期に、ヒトの祖先は森林からアフリカのサバンナへと居住地を移しました。この時期のヒトは、身体的・能力的に驚異的な進化を遂げます。そして主要な変化が骨格機能や生理機能に起こった結果、長くて弾力のある脚と大きな足、強力な臀部の筋肉や、熱を効率的に放散できる汗腺などが発達しました。こうした能力によって、ヒトは比較的疲れにくい長距離ランナーとして開花し、他の捕食者が休むような暑い日にも狩りに出かけ、獲物が疲れ果てるまで追い回すことができるようになったのです。

過去の研究では、CMAHに変異を持つマウスは出生率に変化が見られることが報告されていました。主要著者であるアジット・バーキ医学博士は、このマウスに筋ジストロフィーの傾向があることもわかっていたため、ヒト属の長距離ランナーとしての能力や耐久力と関係があるのではないかと直感したといいます。

このつながりを実証するため、研究者は、マウス用に回し車を組み立ててトレッドミルを借りました。そしてCMAH欠損マウスで15日間の回し車での運動後や、トレッドミルでのテストでパフォーマンスの向上を確認しました。さらに、マウスが疲労に抵抗を示し、ミトコンドリアでの呼吸能力や後ろ足の筋肉が増加していること、筋肉への毛細血管の増加によって血液や酸素供給が増えていることを発見しました。

これらの結果を総合すると、CMAHの喪失によって骨格筋の酸素利用能力が改善することで、長距離ランナーとしての能力を得たということになります。

 

ちなみにCMAHは、CMP-Neu5Ac 水酸化酵素という遺伝子で、シアル酸の代謝に関わっています。CMAHが生み出すNeu5Gcは病原体の感染に関わっているため、CMAHを持たないヒトは感染にも強い傾向があります。つまり、CMAHとシアル酸のつながりの欠如は、長距離ランナーとしての能力だけでなく、自然免疫機能の向上を人類の祖先にもたらしているのです。

 

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via:Phys.org/ translated & text by SENPAI

 

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