幽霊原子? 原子には「存在しない原子」と結合する奇妙な性質がある可能性

chemistry 2018/09/21

Point
・原子には、励起した分子がかなり遠くの軌道までジャンプしてリュードベリ原子と呼ばれる状態になることがある
・リュードベリ原子は遠くの基底状態の原子とトリロバイトボンド(三葉虫結合)という結合で結びつくことがある
・リュードベリ原子を操作して「無」との結合を作る方法を理論的に予言

どうやら原子の中には、「無」と結びつくというとんでもないものがあるようです。一体どういうことなのでしょうか。

通常の化学結合には2つの存在が必要です。しかしある種の原子は、存在しない「幽霊原子」と結合する可能性があることがアメリカのパーデュー大学などの研究でわかりました。研究は“Physical Review Letters”で発表されています。

Theoretical Prediction of the Creation and Observation of a Ghost Trilobite Chemical Bond
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.121.113203

惑星が太陽の軌道を回るように、電子は原子核の周りを回っています。軌道が外になればなるほど、電子のエネルギーは高くなります。しかし、エネルギーが付与されると、電子が軌道を飛び越えることがあり、あるものは非常に遠くまで移動します。その一つの電子がはるか遠くの軌道へとジャンプしたものが、リュードベリ原子です。基本的に、周期表にある原子はすべてリュードベリ原子になれます。そのためには、原子にレーザーを当てて電子にエネルギーを与えれば良いのです。

リュードベリ原子は、化学の観点から見ると変わり者です。なぜなら、リュードベリ原子の離れた軌道にジャンプして励起した電子は、近くの電子のエネルギーが低い基底状態にある原子の電子に、何度もぶつかる可能性があるからです。そして衝突するたびに基底状態の原子を少しずつ引き寄せ、最後にはトリロバイトボンド(三葉虫結合)と呼ばれるもので捕えます。遠くの原子との、このとても小さな相互作用は、リュードベリ原子との相互作用となり、その結果、結合した分子は遠い昔に絶滅した節足動物「三葉虫」の化石とよく似た形をとります。

Credit: Matt Eiles / 幽霊結合のコンピューターモデル。三葉虫と似た形をとる。緑の玉はリュードベリ原子の原子核を表し、青い玉はリュードベリ電子が最も存在しうる場所を示している。同時に青い玉のある場所は「幽霊原子」の場所であり、基底状態の原子があって然るべき場所でもある。

三葉虫分子が最初に予言されたのは2000年で、その15年後に実験的に観測されています。そして今回、パーデュー大学の物理天文学特別教授クリス・グリーン氏のチームは、リュードベリ原子を「欺いて」何もないところに結合を作る方法を提唱しました。

そして理論実験で、チームはコンピューターアルゴリズムを使って、一連の電気的、磁気的パルスをリュードベリ水素原子に適用して三葉虫結合を生み出す形へと成形できることを解明。各電気パルスの合間に、リュードベリ水素原子の電子軌道は伸び、各磁気パルスの合間に少しだけねじれます。「少し驚いたのですが、最後のパルスが適応される直前の中間期の結合電子の状態は三葉虫には全く見えませんでした。最後のパルスが終わった時点になって初めて、目的の状態へ焦点があったのです」とグリーン氏は述べています。

計算が示していたのは、蜘蛛が網を空っぽの空間に打ち出すように、リュードベリ原子が「幽霊原子」との三葉虫結合を形成できる可能性があるということです。その理論上の電子は、まさに他の原子と結合するかのように振る舞いました。しかし、そこには結合できる原子はないのです。それは方向性をもってなされるため、基底状態にある原子との結合が作られるはずの、まさにその場所を指し示しています。この「無」との結合は、少なくとも200マイクロ秒は保たれると予測されています。

研究者たちは、この予言が実験で証明されると自信を持っています。しかし、実験で確かめるには、どのようにパルスを同期し外部的なフィールドを遮断するのか、といった高いハードルがあります。グリーン氏は、無との結合に電子を「欺く」他の方法、たとえば、マイクロ波や早いレーザーパルスを適用するといった方法を見つけたいと考えています。彼はまた、無と結合した原子が化学反応をおこすように刺激されれば、普段の反応とは異なるものになるのではないかと考えています。

 

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via: Live Science/ translated & text by SENPAI

 

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