暗黒物質の正体として「ブラックホール説」が除外される

space 2018/10/03
Credit: Miguel Zumalacárregui image, UC Berkeley
Point
・暗黒物質(ダークマター)の候補として、原始ブラックホールが上がっている
・超新星の輝度と距離のデータを統計解析することと、重力レンズの効果がla型超新星で見られないことからブラックホールや重い天体が暗黒物質の候補として不適格であることが示される

以前、暗黒物質の正体は銀河ハロー上にある原始ブラックホールではないかという記事を紹介しましたが、どうやら違ったようです。

2015年にブラックホールから発せられる重力波を検出してから、天文学者たちの間で「多くのブラックホールが宇宙に広がっていて、暗黒物質として働いているのではないか」という説が持ち上がりました。しかし、カリフォルニア州立大学バークレー校の物理学者らによると、その説は誤っていたようです。研究の詳細は“Physical Review Letters”で発表されています。

Limits on Stellar-Mass Compact Objects as Dark Matter from Gravitational Lensing of Type Ia Supernovae
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.121.141101

2014年までに発見された超新星爆発の統計解析と、隠れたブラックホールによる「重力レンズ効果」によって明るくなったり拡大されたりすることがなかったという事実から、原始ブラックホールが宇宙全体の暗黒物質に占める割合は、あったとしても40%に満たないであろうという結論が出されました。

原始ブラックホールとは、ビッグバンの最初の数ミリ秒で生まれた可能性のある、太陽の数十倍から数百倍の質量が100キロメートル程度の小さな天体に詰め込まれたものです。この結果が示唆するのは、重いブラックホールや、銀河ハローに存在する重くて小さな天体MACHOsなどが宇宙の暗黒物質ではないということです。

暗黒物質の候補は様々上がっており、素粒子のアクシオンからMACHOsまで、その質量の幅は90桁の範囲に及びます。ある説では複数種類の暗黒物質で構成されているというシナリオも提案されています。しかし、暗黒物質が無関係な物質の混在だとすると、それぞれに異なる起源の説明が必要となり、モデルは複雑にならざるを得ません。科学では往々にして、複雑すぎる理論は間違っています。つまり、今回の結果からシンプルに考えると、重力レンズ効果を示すような重たい天体は、暗黒物質の正体ではないと考えられるわけです。

今回の研究がベースにしているのは、目に見えない原始ブラックホールの集団や他の高質量で小さくまとまった天体は、その重力によって遠くの天体の光を曲げたり拡大して地球に届けるだろうという考えです。したがって、遠くのla型超新星の光も重力レンズの影響を受けます。la型超新星は、どの超新星だろうとピーク時の明るさが一定で、輝度の基準や、宇宙の距離の測定に使われている星です。

研究では、2編の超新星に関する明るさと距離のデータセットに対して複雑な統計処理を行うことで、輝き方と光が弱まる様子から、予測される輝度よりも0.2-0.3パーセントの輝度の上昇が8つの超新星で見られるはずだと考えられました。しかし結果として、そのような輝度の上昇は見られませんでした。今回の研究は、以前の研究よりも包括的で様々な可能性が考慮されています。太陽の質量の1%程度の小さなブラックホールでさえ光を拡大することが示されたのですが、そのようなものも見つかっていません。

 

LIGOでの重力波検出で示された原始ブラックホールの可能性は、単なる偶然の一致だったのではないかと研究者は述べています。今回の研究で暗黒物質候補を絞る制限が示されました。二転三転する暗黒物質の正体は一体何なのでしょうか。今後の研究の行方に注目しましょう。

 

暗黒物質の正体は原始のブラックホールだった?シミュレーション実験が行われる

 

via: Phys Org/ translated & text by SENPAI

 

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