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死体の口の中に石? 古代ローマの墓地で発見された「ルニャーノの吸血鬼」

2021.01.27 Wednesday

2018.10.15 Monday

Credit: David Pickel / Stanford University / 口に石が挿入されていた子どもの遺骨
Point
・古代ローマの子ども用墓地から、大きく開いた口に石が入れられた子どもの遺骨が発見された
・1,500年ほど前にマラリアが大流行した際に亡くなった子どもの遺骨で、死体が蘇って病気を広めないようにする魔術として口に石を入れられたと推測される
・人々が死者を扱った方法を見れば、当時の人々の信仰や死に対する考え方を伺い知ることができる

古代ローマの遺跡で発掘された子どもの遺骨が話題を呼んでいます。遺骨の口が大きく開き、その中に石が入れられていたのです。

遺骨を発掘したのは、アリゾナ大学とスタンフォード大学を含むイタリア全土から集まった考古学者たちの研究チーム。イタリア中部に位置するウンブリア地方ルニャーノ・イン・テヴェリーナでの発掘作業で発見された5つの遺骨のうちの一つが、今回話題に上がったものでした。1987年以降行われてきたこの発掘作業を指揮してきたのは、アリゾナ大学の考古学者デイビッド・ソレン氏です。

‘Vampire Burial’ Reveals Efforts to Prevent Child’s Return from Grave
https://uanews.arizona.edu/story/vampire-burial-reveals-efforts-prevent-childs-return-grave

遺骨の口に石が入れられていたのは、マラリアに感染して亡くなった子どもが再び蘇って病気を広めないための、魔術の一つだったのではないかと、研究チームは推測しています。「このような遺骨は今まで見たことがありません。とても不気味で奇妙です」と、ソレン氏は興奮気味に語っています。地元の人たちはこの遺骨を「ルニャーノの吸血鬼」と呼んでいます。

遺骨が埋められていたのは、赤ちゃんや幼児のための専用墓地。5世紀頃にこの地域でマラリアが大流行し、多くの幼い子どもが亡くなった時、かつて存在した紀元前1世紀末頃のローマ人の村辺りに作られたと考えられています。

過去にこの墓地で発見されていたのは、最高でも3歳の遺骨であったことから、赤ちゃんや幼児、生まれる前に亡くなった胎児のための墓地だと考えてられていました。しかし、今回発掘された遺骨は歯の発達具合から10歳頃に亡くなった子どものものと推定され、この墓地がより年齢が高い子どもの埋葬にも使われていた可能性が浮上しています。墓地の中には発掘が手付かずの区画がまだ残っており、他にも年齢の高い子どもの遺骨が見つかるかもしれません。

Credit: David Pickel/Stanford University

他に見つかった赤ちゃんや幼児の遺骨の側には、ワタリガラスの爪、ヒキガエルの骨、灰が入れられた銅鍋、生贄にされた子犬の遺骨などが一緒に埋められていました。加えて、3歳の女児の遺骨には手足に重しの石が付けられていました。これらはどれも魔術や呪術に関連していると考えられています。

「古代ローマ人は、遺体が蘇って地上に出てくることを大変恐れていていたようです。魔術を使って遺体に宿る邪悪なものが、外に出ないようにしていました」と、ソレン氏は説明しています。ルニャーノの墓地に眠る子どもたちの場合、その「邪悪なもの」がマラリアだったことがDNA試験で明らかになっています。今回発見された遺骨のDNA試験はまだ行われていませんが、マラリアの症状である歯の膿症が見られることから、おそらくはマラリアに感染して亡くなったのではと推測されています。腐敗が進む間に顎が自然に開くことは考えられず、石の表面に歯の跡があることから、石は死後に意図的に入れられたようです。

Credit: David Pickel/Stanford University

似た例は他の地域でも見つかっています。2009年、16世紀に埋葬された年配の女性の遺骨が、口に煉瓦を入れられた状態でヴェネツィアで発見されました。2017年には、3〜4世紀頃に埋葬された成人男性の遺骨が、舌を抜かれた口に石を埋められ、顔を下に向けた状態で、英国ノーサンプトンシャーで発見されました。こうした埋葬法は「吸血鬼埋葬法」と呼ばれ、死体の蘇りを恐れる信仰と結びつけられてきました。他にも、心臓を地面に杭で打ち付けて遺体を固定したり、埋葬の前に手足を切断したりといった方法が見られます。

「ルニャーノの吸血鬼」の発見は、マラリアの破壊力だけでなく、それに対する地域社会の反応についても多くの示唆を与えてくれます。遠い昔の人々が死者を扱った方法を見る時、死に対して複雑な感情を持ち、「死は本当にすべての終わりなのか?」と疑うことは、地域や時代に共通してとても人間らしいことなのだと気付かされます。ソレン氏らは、来夏には墓地の発掘を完了させ、マラリアの脅威が人々を震撼させた時代の研究をさらに進める予定です。

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via: sciencedaily / translated & text by まりえってぃ

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