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嗅覚が鋭い人ほど方向感覚が優れていると判明 

2021.01.27 Wednesday

2018.10.21 Sunday

Point
・嗅覚が鋭い人ほど方向感覚にも優れていることが判明
・匂いと方角の認識はどちらも内側眼窩前頭皮質と海馬が司っており、内側眼窩前頭皮質の左側と海馬の右側が厚い人ほど嗅覚と方向感覚の両方が優れている
・人類の祖先は、野生動物のかすかな匂いを嗅ぎ取ることで、獲物や敵の場所を把握していた

グーグルマップどころか、紙の地図さえ存在しなかった時代、人々は一体どうやって地理を認識し目的地へ向かったのでしょうか?鍵は「嗅覚」だったかもしれません。

最近の研究で、嗅覚の鋭い人は方向感覚にも優れていることが明らかになりました。

研究を行ったのは、マギル大学のルイーザ・ダーマニ氏ら(現在はハーバード大学に勤務)。これまでも嗅覚と方向感覚には関係があると考えられてきましたが、決定的な研究が行われたのは今回が初めてのことです。論文はNature Communications誌に掲載されました。

An intrinsic association between olfactory identification and spatial memory in humans
https://www.nature.com/articles/s41467-018-06569-4

研究チームは、被験者57名に対して2つのタスクを与えました。1つ目は、コンピュータ上に示された仮想上の街の地理を20分間で記憶し、その記憶をもとに頭の中に地図を描き、ある地点から別の地点(プール、店など)への道順を答えるというものです。その後、被験者らは40種類の香り付きペン(香りが分からないようにラベルを覆ったもの)の香りを聞いて、画面に示された4つの香りからペンの香りに合うものを選ぶという2つ目のタスクに取り組みました。

まったく関連が無さそうなこれらのタスクですが、ここからペンの香りを正確に当てた被験者ほど方向感覚が優れていることが判明したのです。

匂いと方角の認識は一見まったく別の感覚のように思えますが、実は同じ脳領域で起きています。ダーマニ氏らがあわせて行ったMRI検査では、嗅覚と空間認識はどちらも、内側眼窩前頭皮質(mOFC)と海馬が司っており、内側眼窩前頭皮質の左側と海馬の右側が厚い人ほど、嗅覚と方向感覚の両方に優れていることが判明しました。かつてから、頭蓋骨の前方の眼球のすぐ後ろにあり内側眼窩前頭皮質は意思決定の認知処理を行い、海馬は記憶などの高次脳機能を司る領域として知られています。

さらに研究チームは、内側眼窩前頭皮質に損傷を受けた被験者9名の嗅覚と方向感覚の調査も行いました。その結果、内側眼窩前頭皮質に障害がある被験者には、匂いの識別タスクと空間記憶タスクの両方のパフォーマンスへの悪影響が観察されました。内側眼窩前頭皮質に障害を持つ被験者とそうでない被験者の標準的な神経心理学テストの結果はほぼ等しかったため、嗅覚と空間記憶の障害を一般的な認知障害で説明することはできません。

一見不思議なつながりに思えるこれらの研究ですが、人類の祖先の暮らしから説明がつきます。野生動物のかすかな匂いを嗅ぎ取ることは、獲物や敵の場所を把握することに他なりません。

「今回の発見は、嗅覚と空間記憶の間に、内側眼窩前頭皮質と海馬の作用に支えられた本質的関係があることを示しています。この関係は、嗅覚と海馬組織が並行して進化してきたことで生まれたのかもしれません」と、ダーマニ氏らは説明しています。

嗅覚はまさに「原始の地図アプリ」と呼んでも過言ではないようです。地図アプリではなく、自分の嗅覚に頼って街を歩いてみると、新しい発見があるかもしれませんね。

好きな香りを簡単に閉じ込める方法。「あの人の香りも…!?」

via: bigthink , sciencenews, dailymail/ translated & text by まりえってぃ

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