「学習」で脳は一生変化し続けることが判明

brain 2018/10/29

Point
・知覚学習によって、脳の神経細胞が「新しい軸索を生み出し、古い軸索を捨てる」リモデルを絶えず行うことが判明
・臨界期を過ぎても、一部を除いては脳の接続は一生を通じて変化し続け、新しい経験をするたびに情報を符号化していく
・大人になっても、脳は回路設計を絶えず変える「柔軟性」を備えている

年をとると新しいことを覚えるのが億劫になるもの。しかし、そうした経験や記憶が脳を変化させることが最近の研究で明らかになりました。

研究を行ったのは、ロックフェラー大学で脳科学と行動が専門のチャールズ・D・ギルバート氏ら。意識的に出来事を記憶しようとしていない時でも、私たちの脳が絶えず変化し、世界を解釈しそれと関わる方法を改めることを明らかにしました。論文は雑誌Proceedings of the National Academy of Sciencesに掲載されました。

Axonal plasticity associated with perceptual learning in adult macaque primary visual cortex
http://www.pnas.org/content/115/41/10464

脳内の接続のいくつかは臨界期を過ぎると変化を止めますが、それ以外の接続は一生を通して変化し続け、新しい経験をするたびに情報を符号化する重要な役割を果たします。ギルバート氏はかつて、脳損傷から回復する時、神経細胞が新しい軸索(信号を他の神経細胞へ伝えるための糸)を成長させ、脳が自分自身でリモデルすることを明らかにしました。ギルバート氏は、このリモデルが、脳損傷からの回復時だけでなく、通常の状況下でも常に行われているのではないかと推測し、それを証明しました。

研究チームは、視覚・聴覚・嗅覚の刺激をより良く感じ取るために感覚を調律する「知覚学習」に着目しました。たとえば、私たちは2つの異なる形を繰り返し見ているうちにこれらを無意識に区別できるようになりますが、これも「知覚学習」の一例です。

脳内の視覚野(目から入った信号を受容し処理する脳の領域)神経細胞が学習によって変化するかを調べるため、研究チームは2匹のマカクサルに2つの絵を見せる実験を行いました。どちらの絵にも棒線が無秩序に描かれていましたが、そのうち1つは複数の棒線がつながって一本の長いラインを形づくるように描かれていました。サルに課されたタスクは、このラインを見つけることでした。そして、棒線の数が少ないほど、ラインを見つけることは困難でした。

はじめは、サルはラインが9本の棒線から成るような簡単な問題にしか正解することが出来ませんでした。ところが数週間タスクに取り組むうちに、かなり難しい問題にも正解できるようになり、最終的に1匹のサルはわずか3本の棒線から成るラインを見つけられるようになったほどでした。

また、実験の間、研究チームはサルの視覚野の細胞の変化を追跡。すると、問題を解くのが上手くなるにつれて、視覚野の神経細胞が新しい軸索を生み出し、古い軸索を捨てていることがわかりました。このことは、脳が大人になっても回路設計が絶えず変化する「柔軟性」を備えていることを示唆しています。万一この「柔軟性」が途切れると、自閉症や統合失調症などの行動障害を引き起こす可能性があるようです。

Credit: Laboratory of Neurobiology at The Rockefeller University / 緑の線が新しく形成された軸索

脳の臨機応変さには驚くべきものがありますね。ギルバート氏の研究は視覚刺激にフォーカスしたものでしたが、聴覚や嗅覚などの知覚学習によっては脳内にどのような変化がもたらされるかが気になるところです。

 

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via: sciencedaily / translated & text by まりえってぃ

 

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