他人の不幸を喜ぶ感情「シャーデンフロイデ」の根底にあるのは「非人間化」だった

psychology 2018/10/28

Point
・他者の不幸を喜ぶ「シャーデンフロイデ」は「競争・公平・攻撃」という3つの要素が相互作用することで生じる
・「シャーデンフロイデ」の根底には他者を人間として扱う態度を失う「非人間化」がある
・サイコパス、ナルシスト、サディストなどの性格障害を持つ人々は、「非人間化」を含む「シャーデンフロイデ」の傾向がある

「ざまあみろ」「他人の不幸は蜜の味」―。他者の不幸を喜ぶ感情は、誰もが多かれ少なかれ経験したことがあるのではないでしょうか?

この厄介な感情には、ドイツ語で「被害・損害」を表す”Schaden”と「喜び」を表す”Freude”を合わせた、”Schadenfreude”(シャーデンフロイデ)という心理学用語がつけられています。米エモリー大学の心理学者シェンシェン・ワン氏が率いる研究チームが最近、シャーデンフロイデに関する総説論文を雑誌New Ideas in Psychologyに掲載しました。シャーデンフロイデの分析が、私たち人間のダークな側面に関する重要なヒントを与えてくれそうです。

Schadenfreude deconstructed and reconstructed: A tripartite motivational model
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0732118X18301430

ワン氏らは総説論文の中で、過去30年間に社会、発達、性格、臨床の観点から行われた研究から、シャーデンフロイデを系統的に説明する新しい枠組みを作ろうと試みました。そして、シャーデンフロイデが分離可能で、かつ相互関係のある「競争・公平・攻撃」という3つの要素から構成され、その根底に「非人間化」という共通点があることを示しました。

シャーデンフロイデ研究の難点は、その定義が定まっていない点です。かつて、シャーデンフロイデを悪意あるものとして非難する心理学者もいれば、むしろ道徳的でさえあると主張した心理学者もいました。

ワン氏らは、「嫉妬理論」、「利点理論」、「集団間理論」という3つの理論を用いてシャーデンフロイデを分析しました。「嫉妬理論」は、自分が羨ましいと思う相手の鼻がへし折られた時に嫉妬心が和らぎ、結果として自己評価が上がることに着目した理論です。「利点理論」は不幸が起きた人は過去の悪行に対する当然の報いを受けたのだと考える感情に焦点を当てます。「集団間理論」は、社会的アイデンティティと、スポーツ大会や政治競争でライバル集団のメンバーが負けた時にそれを喜ぶ気持ちに付随するものです。ワン氏らは、シャーデンフロイデを構成するこれらの局面が、それぞれどう異なり、互いにどう作用するかを探ろうとしました。

発達調査によると、私たちは、「子どもたちの健全な発達とはすなわち、良心が育ち社会と上手く関われるようになることだ」と安易に考えがちですが、実は「社会性」には本来ダークな側面が含まれています。たとえば、生後8ヶ月の幼児でも洗練された社会的公正の感覚を持ち、生後9ヶ月までに集団間攻撃の兆しが観察されるようです。また、子どもは5〜6歳頃までに意地悪な競争心を持つようになり、何かを犠牲にしてでも他の子どもより自分の取り分を多くしようとしたりします。そして大人になるにつれ、多くの人々が単純な悪意で他者を犠牲にしようとする気持ちを隠す術を学びます。

ワン氏らは、より統合的な「動機理論」の立場を取り、自己評価、公平性、社会的アイデンティティが相互に作用して人々をシャーデンフロイデへ向かわせると論じています。逆に、他者への共感を人間らしい感情として他者へ示す行為は、私たちをシャーデンフロイデから遠ざけるようです。

さらにワン氏らは、シャーデンフロイデの根底には「非人間化」、つまり他者を人間として扱う態度を失う現象が存在すると解きます。他の民族集団に属する人が、自分たちと同じような感情を持たないだろうと考えることなども非人間化の一例です。戦争中の兵士が敵を容赦無く攻撃するケースなどのように、状況次第で非人間化が生じることもありますが、サイコパス、ナルシスト、サディストなどの性格障害を持つ人々の中には、性質的に非人間化の傾向を持ち、他者の立場に立って物事を考えることができない場合があります。

「シャーデンフロイデは誰も経験する感情ですが、それが私たちが同じ仲間である他者に対して味方にも敵にもなりうることを示す現象なので、私たちはそれを考えないようにしたいのです。ですが、シャーデンフロイデは人間の奥深くに根付く関心事の存在を示してくれます」と、ロシャット氏は語っています。

 

負の性格傾向に共通する「ダークコア」が明らかになる

 

via: sciencedaily, dailymail/ translated & text by まりえってぃ

 

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