重力波によって宇宙の膨張率を高精度で特定できる可能性 ダークエネルギー解明に光

space 2018/10/30
Credit: Robin Dienel/ The Carnegie Institution for Science
Point
・宇宙膨張率であるハッブル定数は2つの方法で測定されているが、2つの結果は乖離している
・中性子星の衝突で起こる重力波と、その望遠鏡による測定を比較することでより正確な距離を知ることができる
・より正確なハッブル定数は、5年以内にはわかるだろうという予測

重力波の応用でダークエネルギーの謎が解き明かされるかもしれません。

皆さんがこの記事を読んでいる間にも宇宙はどんどん膨張しており、しかもその膨張率は加速しています。そしてこの加速を説明するために存在すると仮定されているのが、ダークエネルギーです。今まで、宇宙膨張率の定数であるハッブル定数を決めるための方法は2つありました。1つは、様々な天体の距離と速度を、望遠鏡による観測結果から推定するという方法。もう一つは、宇宙マイクロ波背景放射から標準理論を元に計算するという方法です。しかし、この2つの方法から導き出される膨張率の推定値は異なることがわかっています

2016年に重力波の観測が成功して以来、その応用法が数々生み出されています。そして今回の新たな研究では、重力波が宇宙膨張率を導き出すためにも使えることが示されました。研究はシカゴ大学によって行われ、“Nature”で発表されています。

A two per cent Hubble constant measurement from standard sirens within five years
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0606-0

宇宙の膨張を発見したのは、有名な天文学者エドウィン・ハッブルです。1929年、彼は天の川銀河の外にある銀河の観測することで、「他の銀河が私たちから遠ざかっており、さらに、遠くにある銀河ほど速いスピードで遠ざかっている」と発表。現在の宇宙の膨張率を表す「ハッブル定数」がわかれば宇宙の年齢や大きさが詳しくわかるため、以来、数々の天文学者が正確なハッブル定数の算出に挑んできました。

天体の距離と速度を求める方法では、速度を求めることは割と簡単にできます。移動する光源から発される光の波長が変化する「光のドップラー効果」を利用すればいいからです。他の天体は地球から離れて行くので、赤みを増す方向に赤方偏移します。しかし、距離を求めるのは難しくなります。光度が一定となる天体や変光星を灯台として使うことで、「宇宙の距離梯子」を作って推定することになるのですが、仮定を元に推測しているので精度に欠けます。

一方の宇宙マイクロ背景放射による推定は、宇宙の成り立ちに関する仮説が元となった式に依存しているため、その仮説が間違っているとすると全く違う値が出てしまうのです。

Credit: NASA/WMAP Science Team

一方、新たな膨張率測定法は、中性子星連星による重力波と融合時の電磁波の測定値を元に行われます。重力波は2つの重たい天体が衝突した時に、時空をさざなみのように広がっていきます。望遠鏡による測定では衝突する天体の質量とエネルギーの量が得られますが、この測定結果による解釈と重力波の強さを比較することで、その天体の距離を知ることができるのです。

重力波による測定法は、より簡潔で、宇宙の成り立ちについての推測も少なくてすみます。そのため、他の方法よりも精度が高くなるはずです。論文によると、25の中性子星衝突の測定値が得られた場合、精度は3%以内に、200あれば1%にまで狭めることが出来ます。その時期は、3%で5年、1%までには10年ほどかかるとのこと。

重力波によるより精密なハッブル定数が得られれば、その値がどのようなものであれ魅力的です。例えば、他の2つの方法に見られる乖離について、「時間経過と共に重力そのものの性質が変わっているから」など原因が判明するかもしれません。また、ダークエネルギーの謎を解く鍵をもたらす可能性もあります。

 

重力波によりハッブル定数を決めるためには、もっと多くの中性子星連星による重力波が測定される必要があります。重力波測定には、LIGOよりも感度の高いVIRGOも控えています。重力波イベントの観測によって明らかにされる謎が増えたことで、今後の測定による楽しみが増えました。重力波研究の進展に期待しましょう。

 

「宇宙は膨張し続けている」って本当?

 

via: SciTechDaily/ translated & text by SENPAI

 

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