進化の過程を人工的になぞった「人工合成生物」実験に成功  生命進化の謎に迫る

biology 2018/11/01
Credit: Scripps Research
Point
・大腸菌を改変することで新しい生物を生み出す2つの研究が、進化の謎を解く手がかりをもたらす
・遺伝子の本体であるDNAにRNAの材料が混ざるハイブリッドDNAの形で遺伝情報を保存するように作り変えられた大腸菌が生存・増殖した
・ミトコンドリアを模倣した大腸菌が、酵母の中で細胞内共生し増えることが出来た

進化の過程で起こったと考えられている2つのイベントについて、その未知の過程を再現したような人工合成生物の研究が発表されました。一つは、遺伝情報を担う物質の進化で、RNAからDNAへと移行する段階のハイブリッドな生物について。もう一つは、より複雑な細胞小器官を持つ真核細胞が、他のバクテリアを取り込んで自らの細胞小器官として利用するようになった過程についての研究です。研究は、“PNAS”と“Journal of the American Chemical Society”で発表されています。

Bacterial Genome Containing Chimeric DNA–RNA Sequences
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.8b07046Engineering yeast endosymbionts as a step toward the evolution of mitochondria
http://www.pnas.org/content/early/2018/10/23/1813143115

遺伝子の本体と聞くと、一般にはDNAを思い浮かべると思いますが、その発現を担っているRNAも遺伝情報を持つことが出来ます。実際、ウィルスの中にはそのゲノム情報をRNAに保存しているものがあります。また、RNAにはDNAには無い特徴があります。それは、RNAそのものが酵素活性を持つ「リボザイム」というものが存在することです。

そのため、進化的にはRNAが先に誕生し、RNAがつくる「RNAワールド」と呼ばれる時代があったのではないかと言われています。しかし、RNAはDNAに比べると安定性にかけるため、後にDNAが生まれると、DNAがゲノム情報の保存、複製を担当するようになったと考えられているのです。

CC0 Creative Commons

今回の1つ目の研究では、このRNAから、DNAへの遺伝情報の担体が移り変わる時期の生物がどのようなものであったかに焦点があります。実験では、実験細菌としてよく使われる大腸菌“E.coli”が使われました。“E.coli”はゲノム情報をDNAに保存しています。研究者は、この大腸菌を改造して、DNAにRNAの材料であるリボヌクレオチドが混ざるようにしました。そのハイブリッドDNAの含有するリボヌクレオチドは全体の50%にも及びます。そしてこの改造大腸菌、なんと生き延びることができ、さらに増殖も可能だったのです。

RNAワールドからDNAワールドへの進化の過程で、このようなハイブリッドDNAを持つ種類がいた可能性があります。

2つ目の研究では、細胞内共生で細胞小器官が出来た過程を合成生物を使って調べています。細胞内共生説とは、核を持つ進化の進んだ細胞が、有用なバクテリアを取り込んで小器官として利用するように進化したとする説です。酸素呼吸でエネルギーを生み出すミトコンドリアと、植物の光合成を担っている葉緑体は、元々それぞれ単体のバクテリアだったと考えられています。その証拠に、ミトコンドリアや葉緑体はそれ自身、固有の遺伝子を持っています。とはいえ、共生することで必要な遺伝子数が減ったことで、そのゲノムサイズは小さくなっています。

研究では、大腸菌“E.coli”と単細胞真核生物のパン酵母“S.serevisiae”を使いました。大腸菌は、ビタミンB1の遺伝子が取り除かれており、単体では生存できなくなっています。また、“ADP/ATP translocase”と呼ばれる、「生体内でエネルギーとして用いられる分子ATPを体外に排出するタンパク質」の遺伝子を、人為的に組み込まれています。つまり、ミトコンドリアの代わりにエネルギーを生み出す器官となりうるのです。酵母については、元々存在するミトコンドリアを操作して、エネルギーを産出できないようにしてあります。つまり、この2つの生物が生き延びるためには共生するしかないのです。

その結果、この大腸菌が酵母の細胞内で破壊されないように表面タンパク質を調整したものは、40世代以上調和を持って増殖できる上に、永遠に存続できるかのように振る舞いました。さらに、大腸菌のゲノムから必須な遺伝子を次々に抜いていっても、生き延びることも判明。つまり、真核生物がミトコンドリアを取り込んだ初期の状態を模倣したかのような合成生物が出来たということです。

 

研究には、わからないものを理解するために「とりあえず作ってみる」という方法があります。進化の途中で存在したものの、今はもういない生物を研究するためには、同じ条件の生物を、筋道を辿って作ってみることが近道なのかもしれません。

 

生命誕生の鍵を握る化合物を発見(米研究)

 

via: Phys.org/ translated & text by SENPAI

 

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