仮想世界の物理法則を発見できる「AI物理学者」の開発に成功

artificial-ntelligence 2018/11/02

Point
・仮想世界の物理法則に関する理論を理解できる「AI物理学者」の開発に成功した
・人間の科学者が複雑な現象に関する理論を探す際に用いる4つのストラテジーをAIにコード化することで、高い確率で正しい法則を見つけさせた
・「AI物理学者」の開発は、気候や経済といった大量で複雑なデータセットをもとに、将来を予測する機械の開発に役立つ

ある研究チームが「AI物理学者」の開発に成功したことが話題を呼んでいます。その有能っぷりは、仮想世界の物理法則についての理論を見つけられるほどなのだとか。賢すぎです。

研究を行ったのは、マサチューセッツ工科大学のタリン・ウー、マックス・テグマーク両氏。人間の科学者が複雑な現象に関する理論を探す際に用いる4つのストラテジーをAIにコード化することで、極めて高い確率で正しい法則を発見させることに成功しました。

Toward an AI Physicist for Unsupervised Learning
https://arxiv.org/abs/1810.10525

AIは、データセットを与えられると、それを分析して一つの型を作成します。この型の性質は役割によって異なります。たとえば、AIに猫を識別できるよう訓練したい場合、大量の猫の画像データをAIに与えます。するとAIは、各画像に類似した特性を一般化してアルゴリズムを作り出し、猫の型を作ります。これは、科学者がある現象を、類似した状況における同じ現象に一般化する時のやり方に似ていますが、決定的な違いが一つあります。

たとえば、猫だけでなく、「森の中にいる猫」のような環境の中にいる猫の画像をAIに与えたらどうでしょうか?科学者たちの研究プロセスにより近くなるため、難易度はかなり上がるでしょう。AIには、関係のない詳細な情報(森の植物など)を無視し、猫だけに焦点を絞って猫の型を作ることが求められます。AIは、森にいるすべての猫を表現する型に到達するかもしれませんが、もしあなたのベッドで眠る猫の画像を見せたら、型に欠陥があるため猫として識別できないでしょう。

これは、一つの大きな型を「すべての」データに当てはめるために生じる間違いです。もっとも有効なのは、人間の科学者と同じように、まずは観察データの小集団に当てはまる小さな型や理論を作り、これらの小さな理論を少しずつ合体させながら「万物の理論」への到達を試みる方法ですが、これをAIに教えることは至難のわざです。

この難問に挑むため、両氏は、4つのストラテジーを備えたアルゴリズムをAIに学習させました。大きな問題を小さな問題に分割してそれぞれを解決することで最終的に最初の問題全体を解決する「分割統治法」、ある事柄を説明するためには必要以上に多くを仮定するべきでないとする「オッカムの剃刀」、見た目の異なる複数の理論を同等とする「ユニフィケーション」、生み出した理論を将来の問題解決に役立てる「ライフロングラーニング」という4つのストラテジーで、複雑な現象に関する理論を生み出そうとする際に人間の科学者も用いるものです。

両氏は、これら4つのストラテジーをコード化したAIに、奇妙な物理法則によって支配された40種の仮想世界の環境を、簡単なものから徐々に複雑にして与え、識別できるように訓練しました。目標は、AIが2次元の物体の動きをできるだけ正確に予測することです。そのために、AIはそれぞれの奇妙な環境における独自の物理理論を生み出し、それぞれの環境の中で物体がどう動くのかを理解する必要がありました。

その結果、環境が複雑になるほど、AIが物理法則を理解するのに苦労することが判明しました。しかし、与えられた仮想世界の環境のうち、90パーセント以上の物理法則を正しく見つけ出すことに成功。これは、従来の機械学習アルゴリズムとは比較できないほどの成功率です。

 

「AI物理学者」の開発は、気候や経済といった大量で複雑なデータセットをもとに、将来を予測する機械の開発の布石になりそうです。次世代のニュートンやアインシュタインが、コンピューターのコードだったとしても、まったく驚きではありません。

 

AIだって「精神」を病む。人工知能にも「抗うつ剤」が必要になる可能性

 

via: motherboard / translated & text by まりえってぃ

 

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