psychology

うつ病に3つの「新しい型」を発見、抗うつ薬が効かないタイプの原因が判明する

2021.01.28 Thursday

2018.11.06 Tuesday

Credit: Neuro Science News
Point
・うつ病には3つの新しい型があり、これが抗うつ薬「SSRI」が効かない理由の一つであることが判明
・角回と繋がった脳の異なる領域同士の機能結合がSSRIの効果に影響している
・3つの型は脳機能結合の状態や子ども時代のトラウマの有無が異なるため、これらを指標にすればうつ病の効果的な治療が可能になる

うつ病で苦しむ人の数は、世界中で3億人以上にも上ります。そのうちの多くが、うつ病による深刻な健康被害に苦しみ、現在の治療法に効果を感じていません。

一般的に、うつ病にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬を用いた治療法がもっとも効果が高いといわれています。SSRIは、脳内の「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの放出を促すことで、うつ状態の改善に効果を発揮します。ただし、SSRIでは効果が出ない場合も確認されているのです。

なぜSSRIが効かないケースがあるのでしょうか?この疑問に対し、日本の研究チームが一つの可能性を示しました。うつ病にはSSRIが効かない、新しい型があるようなのです。

研究を行ったのは、沖縄科学技術大学院大学(OIST)神経計算ユニットの銅谷賢治氏ら。これまでコンセンサスを得られていなかった、うつ病の新しい型の存在と、SSRIの効果への影響を探るための新しい研究を行いました。論文は雑誌Scientific Reportsに掲載されました。

Identification of depression subtypes and relevant brain regions using a data-driven approach
https://www.nature.com/articles/s41598-018-32521-z

銅谷氏らは、被験者134名の臨床データを調べました。そのうちの半数は最近うつ病と診断された人で、残りの半数はうつ病と診断されたことのない人でした。研究チームは、アンケートと血液検査を用いて、被験者の生活史、心の健康、睡眠パターン、ストレス要因などの情報を集めました。また、fMRIスキャナーを使って被験者の脳の活動を調べ、78個の脳領域をマップ化し、これらの領域同士の結合を調べました。

OISTで統計学を研究する徳田智磯氏によると、今回の調査における最大の壁は、「類似した項目を束ねて、関連がある情報を引き出す統計ツールの開発」だったそうです。徳田氏は、3,000項目以上もの測定可能な特性を5つのデータ群に分類するための新たな統計法を開発しました。これらの特性には、子ども時代のトラウマやうつ病のきっかけになった出来事の深刻さなどが含まれました。

調査の結果、5つのデータ群のうち、3つがうつ病の新しい型と一致していることが明らかになりました。また、MRI画像からは、「角回」と繋がった脳の異なる領域同士の機能結合がSSRIの効果に影響を与えていることが明らかになりました。「角回」とは、言語、数字、空間認識、注意などの認知処理を司る大脳の領域の一つです。

銅谷氏らは、3つの型のうちの1つは、SSRIが効かず、活発な脳機能結合と子ども時代のトラウマと関係していることを発見しました。一方で、残りの2つの型は、SSRIが効果的で、脳機能結合が不活発で、子ども時代のトラウマとは関係ありませんでした。

脳機能結合の状態や子ども時代のトラウマの有無を調べれば、うつ病をより効果的に治療できるようになります。銅谷氏らが行った『患者の生活史とMRIの分析データからうつ病の型を特定する』という新しい研究は、正確な病因診断と有効な治療を可能にする新たな道筋となることでしょう。

むしろ寝ないほうがいい?うつ症状は徹夜すると改善するという研究

via: medicalnewstodayneurosciencenews / translated & text by まりえってぃ

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