母国語は「認識できる物体」まで変えるという研究 ドイツ人に見えてギリシャ人に見えないものとは

brain 2018/11/07
Credit: Emma Young
Point
・新たな研究が、母国語の違いが私たちが物を「認識する」能力に影響を与えていることを示す
・ギリシャ語やロシア語には「明るい青」に対応する単語が存在しており、それらの言葉の話者は「明るい青」の色の物体を認識しやすい
・そのような母国語の「色のカテゴリー分け」が、物の「認識自体」に影響を与えていることを示した研究としてはこれが初めて

母国語が異なれば体験する世界も異なるといった見解は、長きにわたって定説として存在しています。これに関する研究の多くが「色」の知覚についてフォーカスを当てており、色のカテゴリー分けが言語によって異なれば、見ている世界も同じではないとされています。

しかし、新たな研究においてさらに一歩進んだ見解が示されています。そこでは、母国語の違いは「色の認識」を変えるどころか、その色がついた物体を「認識するかどうか」についても影響を与えているというのです。

Native Language Promotes Access to Visual Consciousness

http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0956797618782181

ギリシャ語とロシア語には、英語やドイツ語にはない「明るい青(light blue)」や「暗い青(dark blue)に対応する単語が存在していますが、逆に、英語やドイツ語が持つような、さらに広いカテゴリーである「青(blue)」に対応する単語はありません。

過去の研究において、何かを細かく「カテゴリー分け」するほど、人はその特定の物を「その他大勢」の中から見分ける能力が向上することが分かっています。つまり前述の例で言えば、ギリシャ人やロシア人は、アメリカ人やドイツ人と比べると「明るい青」や「暗い青」を見つけ出す能力が高いということです。

ここに着目した研究者たちは、言語による色のカテゴリー分けが、話者の物に対する「認識」自体にどのような影響を与えているのかを確かめるための実験を実施しました。まず始めに、28人の「ギリシャ語」のネイティブスピーカーに対して行われたこの実験では、様々な背景色の中に様々な色の「三角形」が13個高速で映し出され、そのうちいくつを認識できるのかについてテストを行いました。

その結果は、研究者の予想通りのものとなりました。つまり、実験に参加したギリシャ語話者の人々は、三角形と背景色がそれぞれ「明るい緑」と「暗い緑」のとき(逆のパターンもあり)よりも、「明るい青」と「暗い青」のとき(逆のパターンもあり)のほうが多くの三角形を認識することができていたのです。もちろん、ギリシャ語には「明るい緑」や「暗い緑」に対応する単語は存在していません。

そして同様の実験を、29人の「ドイツ語」話者に対しても実施しました。その結果、「青」と「緑」の三角形の認識率に差異は見られず、これはドイツ語における「青」や「緑」に細かいカテゴリー分けが存在していないといった事実と一致するものです。

最後に、ギリシャ語と同様の色のカテゴリー分けをする「ロシア語」の話者に対して実験を実施したところ、ここでも研究者の予想を裏切らず、そこでは「ギリシャ語」話者における三角形の認識と同様のパターンが確認されたのです。

「ギリシャ人・ロシア人」と「ドイツ人」の間の「青」と「緑」の違いは、多くの人にとっては取るに足らないことのように感じるかもしれません。しかし、この研究は「母国語の色のカテゴリー分け」が、私たちの刺激に対する「認識自体」に影響を与えることを示した初めてのものであり、1つの大きな成果であると言えるでしょう。

 

やはり日本語はヤバかった。 世界の言語難易度ランキング(英語圏)

 

via: The British Psychological Society / translated & text by なかしー

 

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