謎の征服者ヴァイキングは荒くれ者ではなく、商才と技術革新で成功した「やり手」だった

science_technology 2018/11/18
Point
・タールは古くから船の防水剤などに使用されていた
・野蛮と思われていたヴァイキングだが、タールの製造方法に革命をもたらし、交易品として利用する賢さを持っていた
・タール製造の変化は、小さな窯から大きな窯へと発展することでタールの収穫量を著しく増大させたことにある

海上を自由自在に航海し、多くの海域を侵略した荒々しいイメージのあるヴァイキング。しかし、ヴァイキングの成功の秘密は、強大な武力ではなく「タール」の使用によるものであった可能性が高いことが分かりました。研究は、10月26日に“Antiquity”誌で掲載されています。

ヴァイキングは北方系のゲルマン人で、西欧や北欧の大部分を支配し、今日のイギリスやフランス、スカンジナビア半島を征服したことで知られています。その際に使用されたのが有名なヴァイキング船(ロングシップとも呼ばれる)ですが、その船に防水剤としてタールが使われていました。このタールによって、海と海を渡る長い航海が可能となったのです。

タールとは、石炭や木材など固体の有機化合物を熱分解したとき、ガスとともに揮発し、冷却すると凝縮するどろどろの黒い油を指します。現代では道路の舗装や、木材のコーティングにも使用されています。

そもそもタール自体の歴史は非常に古く、考古学者たちは2000年台初期にスウェーデンにてタール製造の小さな窯を見つけており、推定では紀元前100年から400年頃に使われていたと言われています。

しかし考古学者は、8世紀頃にスカンジナビア半島におけるタール製造方法が抜本的に変わったという新たな証拠を見つけています。そして8世紀は、まさにヴァイキングがヨーロッパの各地域に出没し始めた時期なのです。.ヘニウス氏は、以前は小規模だったタール製造が、ヴァイキングの登場以後、タールへの需要が高まり大規模な製造へと発展していったと説明しています。

ヴァイキングの特徴の一つに活発な交易活動が挙げられますが、彼らは海上を遠くまでさまようことにまったく恐怖を感じておらず、北アフリカやコンスタンティノープル(現在のトルコ)にまで通商航路を広げていました。そして、近年の研究ではアメリカにまで赴いたともいわれており、タールはその交易の重要な役割を果たしていたことが最新の研究で分かっています。つまり、ヴァイキングはタールを船の防水剤としてだけでなく、交易の売買としても使用していたのです。

そして、このタールの革命的な製造方法を開発したのがヴァイキングだったのではないかと、ウプサラ大学のアンドレアス・ヘニウス氏は指摘しています。

 

 

歴史的なタール製造方法は、まず地面に逆円錐型の巨大なくぼみを作り、下部にはタール抽出のための排出口を設けます。そしてくぼみに細かく砕いた大量のマツの木(タールの原料である樹脂を豊富に含む)を隙間なく敷き詰め、その上に空気が入らないように芝生か粘土で覆い蓋をします。もし空気が入ってしまうと、木片はただ燃えてしまうだけで抽出作業ができないためです。そして覆いに火をつけ、空気の下で木片を燃やすことでタールの抽出が始まります。抽出時の窯の温度は400℃から700℃にも達し、作業は2,3日間にわたって続けられました。

ヴァイキングによるタール製造方法の革命的な変化は、ここに「巨大な」タール窯を導入したことにあります。考古学者によると、このような巨大なタール窯は680年頃から900年頃に登場したとされており、これはヴァイキングが海上に姿を現し始めた時期と一致しているのです。

巨大なタール窯を使うことによって、以前よりも抽出量が格段に増え、一回の抽出作業で実に300リットルのタールが得られるようになりました。こうした工業的な規模でのタール製造を成功させたことが、ヴァイキングの明確な海上での優位につながったと考えられます。

タールは何千年も船の防水に使われており、ほとんどの海上文化に幅広く結びついているものです。タールはヴァイキングにとって重要な貿易商品である以上に、船の修復や点検の手間を省き、安全に航海できるようにした革命的な道具なのです。

 

これまで一般的に、ヴァイキングは残酷で野蛮とされてきました。しかし今回の研究では、彼らは交易の手腕に秀でた優秀な船乗りであるだけでなく、人類史において驚くべき技術革新を成し遂げた偉大な技術者であることが示唆されています。人々を従えるには、力だけでなく知力が大事なのでしょう。

 

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via: zmescience . gizmodo/ theguardian / translated & text by くらのすけ

 

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