気分が落ち込むと活発に「おしゃべり」し合う脳の領域を発見

brain 2018/11/10
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Point
・頭蓋内に電極を持つてんかん患者の協力のもと、脳波の測定と気分の記録が行われる
・抑うつや不安で気分が落ち込んだときに、「扁桃体」と「海馬」の間で信号のやり取りが活発になることを発見
・この活発なコミュニケーションが気分の落ち込みの原因であるのか、結果であるのかはわからない

心配や悲しみといった感情を抱いているとき、脳の2つの領域で電気信号のやり取りが活発になっていることがわかりました。その領域とは、感情を司る「扁桃体」と記憶の中枢「海馬」です。研究はカリフォルニア州立大学サンフランシスコ校によって行われ、“Cell”で発表されています。

An Amygdala-Hippocampus Subnetwork that Encodes Variation in Human Mood
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(18)31313-8#%20

この脳内コミュニケーションが塞いだ気分の原因なのか、それとも結果であるのかはまだわかっていません。しかし、気分が落ち込んだときに活発になる領域の特定に成功した意義は大きいです。例えば、患者が落ち込んだ時、実際に測ることのできる身体現象としても評価できます。

今までの研究では、こういった気分や感情の脳活性を調査には機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)が用いられてきました。fMRIは脳の血流を調べることで間接的に脳神経の活動を測ることができますが、間接的であるために脳活性の変化を直後に測ることはできません。しかし今回の研究で使用されたのは、脳波検査頭蓋内脳波検査(intracranial EEG)と呼ばれるものです。脳内や脳表面に電極を埋め込むことで脳細胞の電気的な活性を直接測ることができます。

Photo credit: Fotos CGQ on Visual hunt / CC BY-NC

頭蓋内脳波検査を行うためには、脳内に侵襲的に電極を埋め込んだ患者の協力が必要となります。てんかん患者の中には発作を引き起こす脳の領域を知るために、電極を埋め込んだ人たちがいます。研究ではそういった患者の21名に協力してもらいました。

実験では7日から10日の間の脳波を測定し、参加者たちには、気分日記を使って気分のモニターを同時に行ってもらいました。その結果、21人中13人の患者で、気分が落ち込んだ時に扁桃体と海馬の間でのコミュニケーションが活発になることが判明。

嫌な経験の記憶と悪い気分が密接にリンクしているというのは、精神病理学においては古くからある考えで、認知行動療法のベースとなっている考えでもあります。今回の発見は、この考えに生物学的な根拠を与えたことになります。

今までも、扁桃体や海馬が気分や抑うつ、不安症に関わりがあることは分かっていました。しかしそれは、例えるなら、ラジオから何らかの曲が流れていることが分かっていたにすぎません。今回の発見により、そのラジオの放送局がどこで、周波数をどこに合わせれば聞こえるかまで分かったというわけです。

 

治療への応用としては、この扁桃体と海馬の活発なコミュニケーションを調整したり抑えたりすることで、抑うつを解消できる可能性があります。今後の研究で、抑うつ時に活発になるシグナルがどのように引き起こされるのか、原因を解明するとともに、他の脳領域に影響を及ぼしていないかが調査される予定です。

 

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via: Live Science/ translated & text by SENPAI

 

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