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本当に「かまって欲しいだけ」?  自傷する少女たちの脳容積が減少していると判明

2021.01.27 Wednesday

2018.11.18 Sunday

Point
・自傷行為をする少女たちの脳容積は減少しており、成人に発症する「境界性パーソナリティ障害」と似た特徴を持つ
・萎縮する脳部位は「島皮質」と「下前頭回」と呼ばれる領域であり、これらは感情のコントロールをするのに役立つ
・自傷行為は将来自殺をする予兆ともなっており、それを防ぐためには脳部位の発達を促す必要がある

近年、若者の自殺率の上昇が問題になっています。よく自傷行為をする人に対し、「ただ注意を引きたいだけだ」という声がありますが、果たして本当にそれだけなのでしょうか?

オハイオ州立大学の研究で、深刻な自傷行為をする10代少女の脳は、「島皮質」と「下前頭回」という部位が、自傷行為をしない少女の脳に比べて萎縮していることが分かりました。研究は11月5日付で科学誌“ Development and Psychopathology”に掲載されています。

Self-injuring adolescent girls exhibit insular cortex volumetric abnormalities that are similar to those seen in adults with borderline personality disorder
https://www.cambridge.org/core/journals/development-and-psychopathology/article/selfinjuring-adolescent-girls

実験では、10代の自傷行為をしている少女としていない少女20人ずつを対象に、MRI(磁気共鳴検査法)を施しました。すると、自傷行為をしている少女の脳は、そうではない少女たちに比べて、「島皮質」と「下前頭回」という部位に明らかな萎縮が確認されました。

オハイオ州立大学の心理学教授であるテオドール・ボシェンヌ博士は、自傷行為をする少女の脳は容積が減っており、それが生物学的な変化を起こすことで、少女たちを自殺などより深刻な行為へと向かわせる危険性があると指摘します。

この研究は自傷行為をする10代の少女の脳における身体的変化を指摘した初めてのものです。この発見は、最近アメリカで増加傾向にある自傷行為を考える上で、非常に重要な知見となります。アメリカでは、10代の若者のおよそ20%近くが自傷行為を経験しており、幼年期の子どもでさえ経験があるとのこと。特にアメリカの少女は、その大半が10歳になる前に自傷行為を始めているそうです。

ボシェンヌ博士は、自傷行為を止める他にも自殺を防ぐ解決策はあると話します。「島皮質」と「下前頭回」は、外部にあるポジティブな要因にもネガティブな要因にも非常に敏感に働く脳部位で、それらは20代の前半までは発達し続けます。つまり、この脳部位を発達させることで、脳容積の減少は防げるのです。

今回の脳容積に関する判明した新たな証拠は、自傷行為が将来命を脅かすような深刻な病のサインとして認知されるべきであるという主張を裏付けるものです。現在アメリカでは、少女たちの自傷行為に対して多くの人が「注意を惹きたいだけだ」と見過ごしていますが、真相はどうであれ、まずは少女の真意を知るよりも、自傷行為を止めるほうがずっと簡単なことだとボシェンヌ博士は指摘します。

自傷行為をする10代の若者が増え続けているアメリカですが、私たち日本人も他人事ではありません。日本でも自傷行為者数がもっとも多いのは若年層であり、いじめや自殺など多くの問題を抱える国として、今回の研究は真摯に向き合っていかなければならない問題でしょう。

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via: news.osu.edu / translated & text by くらのすけ

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