未来来た!レーザーで傷を塞ぐ治療ツールが現実に まさに『スター・トレック』の世界

technology 2018/11/15

Point
・レーザーで傷を塞ぐツールは『スター・トレック』で有名
・シルクプロテインと金のナノ粒子を含む補填材を、レーザーによる熱で体内のコラーゲンと結びつけることで傷を塞ぐことに成功
・結合は現在医療現場で使われている方法よりも強力で、施術の時間も少なくてすむ

『新スタートレック』ではライカー副長がありえないほどよく怪我をしますが、幸運なことに、彼にはドクター・クラッシャーがついています。

劇中ではレーザーによって傷が簡単に塞がれていく場面が登場しますが、現実にはレーザーによる患部の切開ならまだしも、傷を塞ぐなど非論理的に思えます。しかし今回、アリゾナ州立大学の研究で、実際に傷を癒やせることが分かりました。研究は9月5日付で“Advanced Functional Materials”に掲載されています。

Rapid Soft Tissue Approximation and Repair Using Laser‐Activated Silk Nanosealants
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/adfm.201802874

研究はまだ概念実証段階ですが、実験では豚の腸やマウスの皮膚の接合に成功しています。接着力も強く、通常の糸による縫合の7倍も強いことがわかりました。また、縫合やホチキス、医療用接着剤などは浸潤や組織回復に時間がかかるといった問題があるのですが、そういった問題にも改善が見られたとのこと。

レーザーによる接着には、補填材が必要となります。その材料は、シルクプロテインと金のナノ粒子です。シルクプロテインはフィブロインと呼ばれており、細胞結合の働きを持つコラーゲンに結合する能力があります。金の粒子に近赤外線レーザーが当たると、放熱し、その熱がシルクと皮膚の間に頑丈な結合を生みます。近赤外線レーザーによる皮膚へのダメージはありません。

エンジニアが開発しているのは、用途に応じた2種類の補填材です。一つは、湿った患部に利用できる水に溶けないタイプで、もう一つは乾いた患部に使える水に溶けるタイプです。

Photos: Russell Urie/Advanced Functional Materials

水に溶けないタイプの試験は、豚の腸で行われました。この補填材とレーザーを使った結合は、他の方法より強力で、傷を塞いだ腸に液体を流す試験を行ったところ、漏れ出しが7分の1に減っていました。それは、傷のない腸とほぼ同等といえるレベルです。

水に溶けるタイプの試験は、マウスの皮膚に1センチの傷をつけることで行われました。レーザーによる縫合力を施術後2日で比べたところ、他の方法に比べて有意に強い結合となっていることが分かりました。しかも、施術にかかった時間はわずか4分に過ぎません。

治療に使われる近赤外線レーザーは、皮膚への浸透力も高いので、深い傷にも対応できます。この技術を血管や神経の縫合に使うことができれば、施術の時間短縮にもなりますし、施術者の熟練度の高さも必要がなくなります

Photo credit: JD Hancock on VisualHunt.com / CC BY

補填材に金が使われることから、コストが高く付くのではないかと思うのですが、研究者によると、実用的な範囲には収まりそうです。コストが掛かるのは、レーザー装置への初期投資だけでしょう。

 

現在、生きたラットを対象に、縫合の持続性が試験されています。うまくいけば、最終的には人間での試験が行なわれるでしょう。未来の病院ではたとえドクター・クラッシャーがいなくても、スタートレックのような手術風景が当たり前になっているかもしれませんね。

 

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via: IEEE Spectrum/ translated & text by SENPAI

 

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