記憶には「絵を描く」ことが驚異的に効くという研究

life 2018/11/24

Point
・物事を覚えようとする時は、その内容の複雑さにかかわらず、その絵を描くことが効果的なことが判明
・物事の意味を詳細に理解し、その定義を絵という新しい形式に翻訳することで、符号化が進み、記憶が促進される
・年齢にかかわらず効果があり、絵の上手さは関係ないため、高齢者や認知症患者への活用が期待される

仕事や勉強で、難しい用語や概念の意味を覚えようとする時、みなさんはどんな方法で記憶しますか?

単語の綴りや意味を書き写したり、繰り返し口で唱える人もいれば、頭の中でイメージを膨らませたり、絵や図に描いて覚える人もいるでしょう。

カナダのウォータールー大学で行われた新しい研究で、物事を覚えようとする時は、その対象物の絵を描くことが効果的なことが明らかになりました。しかも、その効果は年齢に関係なく、認知症患者にも効果があったとのこと。記憶力向上のテクニックの一つとして、高齢者や認知症患者への活用が期待されています。

The Surprisingly Powerful Influence of Drawing on Memory
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0963721418755385?journalCode=cdpa

研究を行ったのは、ウォータールー大学のマイラ・フェルナンデス氏ら。被験者に「トラック」、「梨」といった単語を見せて、その絵を短時間で描かせた場合と、その単語を複数回文字に書かせた場合とを比較したところ、前者の方が圧倒的に単語を記憶できる確率が高いことを発見しました。対象物を頭に思い浮かべたり、対象物の写真を見たりするよりも、4秒間という短時間で絵を描く方が効果的だったというのですから、絵の力は絶大です。フェルナンデス氏らによってはじめて立証されたこの効果は、「描画効果」と名付けられました。

さらに、より複雑な用語や概念を覚える場合でも描画効果があるかどうかを調べるため、「アイソトープ」や「胞子」といった単語とその意味を被験者に見せました。その結果、見せられた単語の絵を描いた被験者は、それらの定義を書き写しただけの被験者と比べて、これらの単語の意味を記憶する確率が高いことが分かりました。絵を描くためには、その対象物の意味を詳細に理解し、その定義を絵という新しい形式に翻訳することが要求されるため、記憶が促進されるのではないかと、フェルナンデス氏らは考察しています。

実際、単語や概念の絵を描くプロセスはさまざまな要素から構成されており、それぞれの要素が累積的に記憶を助けています。「用意されていた絵をなぞらせる(手は使うが、頭は使わない)」、「描いた絵を後で見せない(手も頭も使うが、描いた絵から記憶を引き出せない)」などの、部分的にこれらの要素が欠けた場合でも記憶に一定の効果はありましたが、すべての要素が揃っている時ほどの効果はありませんでした。このことは、各要素が段階的に積み重なり、符号化が進むにともなって、記憶が向上することを意味しています。

加えてフェルナンデス氏らは、高齢者と若者の記憶についても比較を行いました。その結果、文字に書いて覚えた時は、高齢者は若者よりも単語を覚えられなかったのに対し、絵を描いて覚えた時は年齢によるその差が無いことが判明しました。この結果に勇気づけられた彼らは、介護施設で長期間暮らす認知症患者13名に対しても調査を行いました。60個の単語を大きな声で読み上げて、絵を描かせたり、文字に書かせたりしたところ、絵を描いた方が圧倒的に効果があることが明らかになりました。

「そんなに効果的なら、自分も試してみたい」と思った方の中には、「絵は苦手だけど大丈夫かな?」と心配な方もいるでしょう。でも心配無用です。実際に被験者が描いた絵の中には、ただの落書きのようなものもありましたが、絵の上手さや経験は効果に関係ありませんでした。一本の棒さえ満足に描けなかった被験者でも、記憶向上の効果が得られたのです。

「描画効果」が、学校や介護施設を含む実生活のシチュエーションでどう役立てられるかについては、まだまだ多くの調査が必要です。とはいえ、この包括的な研究が、絵を描いて覚えることが符号化の戦略の一つであり、記憶力を劇的に向上することを一貫して示していることは間違いなさそうです。

 

物の保管場所や人の名前など、日常生活の中でつい忘れてしまうことはたくさんあります。絵を描いて覚える方法、実際に効果があるかどうか早速試してみたいですね。

 

40%の人が幼少期の「架空の記憶」を持っているという研究

 

via: digest.bps / translated & text by まりえってぃ

 

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