音楽を「皮膚で聴く」ウェアラブル端末”M:NI” 「不可能を可能に」

technology 2018/11/26
Credit: Zappos
Point
・皮膚を通して音楽の振動を感じることができるウェアラブル端末”M:NI”を使ったコンサートが大成功した
・コンサート会場の音響システムと直接接続され、メロディーの変化に応じてバンドに内蔵されたセンサーに電気振動を送る仕組み
・”M:NI”は、これまで耳を通して聞いていた表現形式を、皮膚を通して感じる表現形式に変化させる技術で、聴覚障害者だけでなくすべての人々に有益になりうる

今年の9月、ラスベガスのライブハウスで、ある珍しいコンサートが行われました。集まった観客の中の一部が、聴覚障害者だったのです。

なぜ耳の不自由な彼らがコンサートを満喫できたのでしょうか? それは、皮膚を通して音楽の振動を感じることができるウェアラブル端末を装着したためです。今回開催されたコンサートは、この新技術のテストも目的でした。

”Music: Not Impossible(音楽:不可能ではない)”、略して”M:NI”と名付けられたこの技術は、元映画監督で、現在は起業家として人々の役に立つ技術を開発するベンチャー企業”Not Impossible Labs”の代表を務めるミック・エベリング氏によって発案されました。バッテリーが内蔵された2つのリストバンド、2つの足首用バンド、背中と肩に固定するハーネスから成っています。会場の音響システムと直接接続され、メロディーの変化に応じて、それぞれのバンドに内蔵されたセンサーに電気振動を送るという仕組みです。

20,000ヘルツという高い周波数の音も聴き分けられる耳に対して、皮膚は10〜1,000ヘルツの周波数しか区別することができませんが、強弱や振幅の変化は極めて敏感に感じ取ります。エベリング氏が利用したのはこの特性でした。

エベリング氏がこのアイディアを閃いたのは、コンサートに訪れた耳の不自由な観客が、音楽の振動をできるだけ感じるためにステージの前方に行こうとすることに気づいたから。彼の目には、彼らが低音域帯の音しか感じられず、生の音楽を体験できていないように映りました。聴覚障害者が音楽をマジカルにする忠実性やシャープな高音を感じる手立てはないものかと思い、耳を回避しつつ知覚体験の真の源である脳をハッキングする方法について熟考を重ねました。そして、人体でもっとも大きな組織である皮膚を活用することを思いついたのです。

完成した最初の試作品は、デザインとしては不恰好なものではありましたが、この技術が機能することを証明するには十分なものでした。エベリング氏らは数年の間に、聴覚障害者の歌手であるマンディー・ハーベイの助けを借りて改良を進めました。

注目すべきは、M:NIが、聴覚障害者のためだけに開発されたものではないということです。聴覚障害者にとって最も有益な最近の発明はスマートフォンだと言われていますが、これは、スマートフォンがあれば、メールを打ったり、ビデオ通話で手話でコミュニケーションを取ったりできるからです。スマートフォンが聴覚障害者向けに開発されたわけではないのと同じように、M:NIもまたすべての人々の生活向上のために作られました。

Credit: Zappos / コンサート会場前のM:NIを身につけたミック・エベリング氏

エベリング氏らは、M:NIで音楽に取って代わろうとしている訳ではなく、音楽に関係する別の体験を提供しようとしています。M:NIは、これまで耳を通して聴いていた表現形式を、皮膚を通して感じる表現形式に変える技術なのです。

M:NIを体験した観客は、聴覚障害者であってもそうでなくても、自分の身体が楽器になって、身体を通して音楽が演奏されているように感じたと報告しています。ある女性は、まるで「ピアノの弦の中にいる」ようだったと例えています。こうして、コンサートは大成功。参加者の中には、M:NIを返したがらない人もいたほどだったといいます。

エベリング氏は、「振動触覚DJ」の出現を予言しています。腕の良いDJは、人気の音楽を再解釈し、複数の異なる要素を独自にミックスすることで、一つのライブ体験を生み出します。「現在、私たちは音楽を振動触覚に翻訳する取り組みを行っています。そのビジョンの一つは、アーティストが先に作り出した振動触覚体験をもとに、その感覚を強調するにはどの楽器を使うのが最適かを見つけることです」と、エベリング氏は説明しています。

 

来年には商品化が予定されているM:NI。レディ・ガガやファレル・ウィリアムスなどの大物アーティストも、M:NIのファンなのだそうです。「音楽に身体を包まれる」ことを通り越して「自分の身体そのものが音楽になる」ような感覚は、すべての人々に新しい音楽の楽しみ方を提供してくれそうですね。

 

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via: arstechnica / translated & text by まりえってぃ

 

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