・溶岩は氷に触れると、泡を立てながら瞬時に固まる
・溶岩は超高温なので、氷をそのまま水蒸気に変える
・水蒸気の層が氷の表面を覆い、溶岩と氷の間の摩擦力を最小化するため、溶岩は氷を貫通して穴を空けることなく、氷の表面を滑る
「火山」という言葉を耳にして思い浮かぶのは、オレンジ色や黄色のドロドロした不気味な物体を噴き出す山ではないでしょうか?それはさながら、地獄へ向かって流れる川のようです。
溶岩は、地球の表面でもっとも高温の物質の一つ。ハワイ島のキラウエア火山を例にとると、噴火時の溶岩の温度は約1,170℃。まさにグツグツと煮えたぎる灼熱の世界です。噴火の際に火山から吹き出した溶岩は、すばやく地上を流れていきます。はじめて大気に晒された溶岩は、驚異的な速度で冷却されます。
この熱々の溶岩を、「冷え冷えの氷の上に垂らしてみよう!」というなんとも好奇心をくすぐる実験を行った研究チームがいます。米シラキュース大学のボブ・ワイソッキーとジェフ・カーソン両教授は、雪で覆われた火山の噴火のダイナミクスを調べるため、300キロ以上の溶岩を氷の板の上に流す実験を行いました。
https://pubs.geoscienceworld.org/gsa/geology/article-abstract/41/8/851/131297/insights-on-lava-ice-snow-interactions-from-large?redirectedFrom=fulltext
結果は、氷に触れた瞬間に爆発する?それとも、瞬時に氷に穴が空いて貫通する?いいえ!氷の上で溶岩が泡立つのです。
その衝撃映像がこちら。
氷の上にドロリと流れ出た溶岩が、ぶくぶくと泡を立てつつ瞬時に固まっていく様子が分かります。はじめはオレンジ色をしていた泡は、見る見る間に黒く変色します。
これは、溶岩があまりにも高温なために、氷を水に変えること無く、そのまま水蒸気に変えるからです。水蒸気は溶岩の外へ抜け出そうとしますが、逃げ道がないために、氷の上で溶岩が泡立っているように見えるのです。冷えはじめた溶岩の表面には、黒く分厚い層が形成されます。この層が、その下で発生した超高温の水蒸気を捉えることで、泡が形成されます。まるで、自然の吹きガラスですね。
また、超高温の溶岩は氷に触れた瞬間に氷を貫通して穴を空けそうなものですが、実際には氷の表面を這うように流れます。実は、この要因も水蒸気なのだとか。溶岩が氷に接触した瞬間に生まれる水蒸気は、氷の表面を毛布のように覆います。この水蒸気の層が、溶岩と氷の間の摩擦力を最小化するため、溶岩が氷の上を滑るのです。恐るべき水蒸気パワーです。
氷の上で泡立つ溶岩は、熱々のフライパンに流し入れた溶き卵から作った「地獄のスクランブルエッグ」のよう。といっても、猫舌じゃなくても食べられそうにないのが残念なところです。
via: scienceabc / translated & text by まりえってぃ