謎だった「陽子の質量」の正体が判明

quantum 2018/11/27
Photo credit: @Doug88888 on VisualHunt / CC BY-NC-SA
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Point
・陽子の質量は、構成しているクォークの持つ質量を足し合わせたものでは全く足りない
・格子ゲージ理論を利用した量子色力学による算定により、陽子の質量の構成成分を計算
・陽子の質量の内訳は、クォークの質量は9%、クォークのエネルギー32%、グルーオンのエネルギー36%、クォークとグルーオンの相互作用によるスケール不変性の破れによるもの23%とわかる

原子核を構成する粒子の一つである陽子は、3つのクォークでできています。しかし、陽子の質量は、3つのクォークの質量を足し合わせたものよりも遥かに大きいのです。一体この差の正体は何なのか、長く議論が行われていました。

しかしミシガン大学などの新たな研究によると、構成するクォークの質量は陽子の質量のほんの9%でしかなく、質量の残りの部分は、素粒子の複雑な効果によってもたらされることがわかりました。研究はミシガン大学、ケンタッキー大学等による共同チームで行なわれ、“Physical Review Letters”で報告されています。

Proton Mass Decomposition from the QCD Energy Momentum Tensor
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.121.212001

クォークの質量は、2012年に初めて観測された質量をもたらす素粒子として知られるヒッグス粒子と結びつく過程で生まれます。しかし、クォークの質量は極めて小さいのです。

陽子の質量9億38百万電子ボルトの内ほとんどが、量子色力学(QCD)の複雑性によって生まれています。量子色力学は陽子内部の強い核力を説明するための説です。陽子の理論的な特性を研究するために、QCDの計算をするのは非常に骨が折れます。格子ゲージ理論を利用して、クォークの存在する時空は格子に分解されることで計算が可能となっています。

この方法を使うことで、陽子の質量は計算されています。しかし、その質量がどこから来たのかは分かっていませんでした。

陽子の質量の9%はクォークの質量から来ていますが、今回の発見で、32%はクォークが核内を飛び回るエネルギーから来ていることがわかりました。アインシュタインの有名な等式E=MC2でもわかるように、エネルギーと質量は変換可能です。陽子内には、クォークを結びつけている質量のないグルーオンがありますが、そのエネルギーが質量の36%を構成しています。

残った23%は、クォークとグルーオンが陽子の内部で複雑に相互作用した際に起きる、量子効果によって発生しています。この相互作用においては、QCDはスケール不変性に従いません。スケール不変性というのは、時間や空間が伸びたり縮んだりした場合でも、理論的帰結に変化が起きないというものです。大きな粒子はスケール不変性に準じますが、粒子が小さくなり量子効果でスケール不変性が破れる時、陽子は質量を得るのです。

 

日々、体重計を見てはため息をつくなど、重さというのは身近に感じられるものですが、その正体となるとあまりわかっていません。今回の研究で、陽子の質量の内訳が計算できたことで、新たな科学知識が得られたことになります。質量はヒッグス粒子だけによって作られているわけではなさそうです。時空を歪めるという直感的にはわかりにくい質量ですが、その解明の基盤が一つ固められたようです。

 

 

 

via: Science News/ translated & text by SENPAI

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