ラットの「次にとる経路」が予測可能に  

brain 2018/11/30

Point
・海馬には場所細胞と呼ばれる、場所に紐付けられた回路が存在していることがわかっている。
・場所細胞は、現在地に対応するものが反応するだけでなく、次に向かう先に対応するものの反応もあることがわかる
・場所細胞のパターンをみることで、ラットが迷路で次にどの通路に向かうかを予測できた

海馬には「場所細胞」と呼ばれる、ある場所にいる時に発火する細胞があることが知られています。どの「場所細胞」が発火したかを見ることで、ラットがどこにいるのかが分かります。神経科学者はさらに、次にラットがどこに行くのかを神経の発火のパターンを見ることで予想することができるようになりました。研究はオーストリア科学技術研究所で行なわれ、“Neuron”に掲載されています。

Assembly Responses of Hippocampal CA1 Place Cells Predict Learned Behavior in Goal-Directed Spatial Tasks on the Radial Eight-Arm Maze
https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0896627318310067

研究者は、ラットの海馬にある場所細胞の信号を元にして、ラットがどこにいるのかを知ることができます。しかし、時々、現在いる場所とは違った場所細胞が発火するのを発見。これは「何か働きを持つに違いない」と考えました。研究者は、他の場所のことを考えているときに発火するのではないかと推測。特に、迷路の中のエサを回収していくという作業をするときに、場所のことを考えるのではと推測し、迷路実験を行いました。

Credit: IST Austria/Birgit Rieger

実験に使われた迷路は、中央から8方向に通路のあるものです。その中の3箇所にエサが置かれています。ラットはエサの在り処を覚え込むように、何度も迷路にトライさせられます。研究は、2種類の記憶を分けて考えられるようにデザインされました。1つは参照記憶で、もう一つは作業記憶です。参照記憶は、エサのある場所を過去の記憶を元に見つけ出す時に使われる記憶です。作業記憶は、迷路探索中に、一度通った経路を再び探索せずに済むように覚えておく短期的な記憶です。

作業記憶だけを研究する際には、エサのある通路の入口だけが空いた状態で行います。エサの場所を覚えておく必要がないので、参照記憶は不要となり、作業記憶だけを見ることができます。参照記憶だけをみるときは、すでに通った通路の入口をふさぐという方法を取ります。通路が塞がれることで、すでに通った場所を覚える作業記憶が必要なくなるので、参照記憶だけを見ることができるのです。

そして、迷路探索の際にどのように場所細胞が発火するのか、そして、作業記憶を見た時と参照記憶を見た時で違いが現れるのかを観察しました。つまり、次の通路に向かうために8つの通路の中央にいるラットが、さっき通った通路に対応する場所細胞が発火するのか、それとも次に向かう通路に対応する場所細胞が発火するのかを見たのです。

すると、参照記憶の実験をしているときに、次の通路に対応する場所細胞の反応が見られ、ラットのエサ回収の予定を予測することができました

さらには、次の予定を予測するだけでなく、いつミスを犯すかも知ることができたといいます。ミスを犯した時、ラットは誤ったランダムな場所細胞に従っていました。場所細胞をみることで、ミスを犯す前にミスを予測することができたのです。ただ、予測を間違えることもありました。それは作業記憶単独の実験をしている時だけに起きました。ラットが事前に訪れた通路の場所細胞が再び反応したのです。

 

参照記憶を頼りに移動している時、目的とする場所の「場所細胞」のパターンが発火するという今回の研究。海馬の活動パターンさえわかれば、次の行動の先読みができることを示しています。次に行く場所がバレバレになったラットくんですが、人間に応用されたときのことを考えると恐ろしくもあります。くれぐれも、悪用禁止です。

 

人間の思うままに操れる「サイボーグマウス」の技術がスゴイ…!

 

via: Science Daily/ translated & text by SENPAI

 

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