ハエトリグモは「母乳」で子育てしていることがわかる

animals_plants 2018/12/01
Credit: Chen Zhanqi
Point
・ハエトリグモの子グモは生後20日の時点で自分で餌を捕まえられるようになるが、生後40日前後までは母グモの上腹部の皺から染み出した母乳を摂取する
・長期間にわたって授乳と育児を受けることで、子グモは自力で食料を確保できる体格と力を獲得する
・繁殖能力を得た後に故郷の巣に帰ることが許されるのはメスだけだが、これは近交弱勢を避けるためだと推測される

哺乳動物はその呼び名からも明らかなように、母乳で子育てを行います。しかし実はこの生態、哺乳類に限ったものではなさそうです。

11月30日付の”Science”誌に中国科学院Xishuangbanna熱帯植物園のチェン・ツァンチー氏らが発表した論文で、ハエトリグモが授乳を行うことが報告されました。ハエトリグモはよく走り回りジャンプが得意で、ハエ類などの小型の虫を主食するクモです。また、アリに擬態して、アリの列の側からアリを狙う種類が存在することも知られています。

Prolonged milk provisioning in a jumping spider
http://science.sciencemag.org/content/362/6418/1052

研究チームは、ある種のハエトリグモが、2匹以上の成虫、または1匹のメスの成虫と数匹の若いオスの成虫から成る繁殖巣を作ることを発見しました。従来、ハエトリグモは共同体を形成しないと考えられてきたため、この発見は困惑をもって受け止められました。このことから彼らは、母グモが出産後に育児を行うか、または成熟し繁殖能力を得た後にも出生地からの分散を遅らせ出生地に留まる「分散遅延」を行う可能性があると考えました。

そこで、実験室の中と野外の両方で、ハエトリグモの子どもの成長の仕方と、母グモのもとでの行動の仕方を調査したところ、生後20日を経過していない子グモは餌を探すために巣の外へ出ないことが判明。また、さらに詳しく調べたところ、母グモが母乳に相当する栄養素を含む液体を子グモに与えていることが明らかになりました。

ハエトリグモの授乳は、哺乳類と同じように特殊な組織を通して一定期間行われます。子グモは母グモの上腹部の皺から染み出した母乳を吸い、これは生後40日前後で成長期が終わるまで続きます。万一母乳が断たれれば、子グモは成長を止め、10日以内に死亡します。このことは、生後まもない段階においては、母乳が子グモの成長に不可欠なことを示しています。

母グモは子育てに追われながらも、子グモの抜け殻を外に運び出したり、巣の壊れた箇所を修理したりと、大忙しです。それにもかかわらず、子グモが自分で餌を捕まえられるようになる生後20日を過ぎてからも、母グモはさらに20日間にわたって育児と授乳を続けます。そこでチェン氏らはこの理由を調べました。

生後20日以降も授乳を継続しても、成虫の生存率、体格、性比、成長速度には影響がありませんでしたが、母グモが長期間にわたって授乳と育児を行うことが、子グモに健康な体格とたくましく生き延びる力を保証することを、彼らは突き止めました。

つまり、我が子が自力で食料を確保できる強健な成虫に育つよう、母グモは育児と授乳をあえて長めに行うのです。まさに、子を一人前にしたいと願う親心ですね。研究チームによると、母グモの育児と授乳を受けた子グモのうち、生き延びて成虫になり生後約52日を迎えることができた子グモは全体の76パーセントでした。

さらに興味深いことに、繁殖能力を得た後に故郷の巣に帰ることが許されるのは、メスだけでした。もしオスが巣に戻ろうとすると、攻撃を受け追い払われてしまいます。これは、遺伝子が近いもの同士の交配が繰り返されることで形質の弱い個体が増加する「近交弱勢」を避けるためのようです。

ハエトリグモの母親は父親よりも多くのものを我が子に投資します。オスよりもメスの比率が高いのは、ハエトリグモの一夫多妻制の交配システムの中で子孫を残すためにはその方が好都合だからです。

 

哺乳類と同じように授乳や育児を行う無脊椎動物が存在するとは、驚きですね。今回の発見が、「生き物の授乳や育児はどのように進化してきたのか?」、「他の生き物でも授乳や育児が行われているのでは?」といった疑問を再考するきっかけを与えてくれそうです。

 

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via: sciencedaily / translated & text by まりえってぃ

 

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