記憶の保存場所は海馬ではない? 脳の物理的変化は数時間で起こるという新研究 

brain 2018/12/06
Credit: CC0 Public Domain
Point
・記憶の定着には長期にわたる学習刺激が必要であり、記憶の中枢は海馬であると言われている
・特殊なMRIで脳内の水の拡散を見ることで、学習中の脳の物理変化を見る研究が行なわれる
・記憶によるものと思われる物理変化は学習の数時間で起こり、保存場所は海馬ではなく側頭葉後部であったことが観察される

ドイツのチュービンゲン大学とマックスプランク研究所による研究で、新しい記憶の形成による脳内の物理変化が、思われていたよりも早く、従来の説と異なる方法で行なわれるという証拠が示されました。“Science”で発表された論文で、この発見が馴染みの薄い種類のMRI(核磁気共鳴画像法)によってなされたことが示されています。

Fast track to the neocortex: A memory engram in the posterior parietal cortex
http://science.sciencemag.org/content/362/6418/1045

先行研究においては、学習は徐々に起こる進行性のもので、新しい情報を定着させようとするとき、すでに存在している脳の物理領域へと情報が保存されることが示されています。つまり、学習が行なわれるごとに、新たな知識が蓄えられるように脳は変化するのです。

また広く知られているように、先行研究では記憶の保持に関わる最も主要な器官は海馬であると示されていました。しかし実際のところ、記憶のメカニズムについてはよく分かっていません。そして今回の研究では、先行研究への挑戦ともいえる結果が出ました。

何か新しいことを学習した際、人間の脳の中でどのような物理変化が起こるのかを詳しく研究するために、ボランティアを対象に拡散強調画像MRI(DW-MRI)を使った実験が行われました。この馴染みの薄いMRIは、体内での水の拡散を検出できます。被験者が新しい学習素材を学ぶ際に、脳の中でどのような水の拡散が起こるかが調べられました。水の拡散が見られるということは、そこで物理的な変化が起きたということです。その結果、脳が記憶を形成する際の物理変化に関して、新しい視点が得られました。

報告によると、脳内の物理変化はボランティアが学習素材に触れている数時間の間に起こっていることが観察されました。また、この脳の変化は海馬ではなく、頭頂葉後部で起こっていることも発見されています。記憶による物理変化が海馬ではなく局地で見つかったことから、記憶は海馬のような中枢的な「メモリーバンク」に蓄えられるのではなく、脳全体に渡る局所に蓄えられるという説を支持する結果となりました。

 

今回の研究で、DW-MRIによって水の拡散を見るという方法が、脳の微細構造を研究するために有効であることが示されました。外部の世界と関わるときに、私たちの脳でいったい何が起こっているのか、より包括的で詳しい視点をこの方法は与えてくれるでしょう。

 

40%の人が幼少期の「架空の記憶」を持っているという研究

 

via: Medical Press/ translated & text by SENPAI

 

SHARE

TAG

brainの関連記事

RELATED ARTICLE