「ゲノム編集」の中国人科学者が失踪!? 大学側は「軟禁」の噂を否定するも…

life 2018/12/05
Credit: The He Lab
Point
・CRISPRで遺伝子編集を行った双子を生み出した、中国の科学者の行方がわからなくなっている
・彼の研究は、倫理的な側面だけでなく、科学的な側面からも、疑問が投げかけられるような杜撰なものだった
・遺伝子編集された赤ちゃんが、実際にはHIV耐性を得られていない可能性もある

先週、二人の赤ちゃんの遺伝情報を書き換えることに成功したと発表し、世界を驚かせたハー・ジェンクイ氏。科学者コミュニティーからは、深い懐疑と激しい批判にさらされました。

しかしこの事件、ここにきて奇妙な展開を見せました。中国のメディア“South China Morning Post”が、ハー氏が失踪したと報じたのです。

「大学に軟禁されている」という報道もありましたが、ハー氏が所属していた南方科技大学は、ハー氏が中国政府によって監禁されているという主張を否定しています。「現在、情報が錯綜していますが、正確な情報は当局のものだけです」と説明しています。

中国の科学者が「遺伝子編集でHIV耐性を持つ女児が生まれた」と報告 倫理面では強い反発の声も 

先日11月26日、ハー・ジェンクイ氏は、CRISPR技術によって遺伝子編集することでHIV耐性を持たせた双子の赤ちゃんを作ることに成功したとYoutube動画で発表。ハー氏は、彼の研究に対して科学的な審査を拒み、メインストリームのジャーナリズムやソーシャルメディアで拡散する方法を選びました。

この衝撃的な発表の後、倫理的および純粋な科学的側面からも、科学界からの激しい批判を受けたことは記憶に新しいでしょう。ヒトゲノム編集国際サミットにおいては、ハー氏は彼の成果が「リークされた」と主張をしていますが、実際は慎重に計画されたメディアリリースの一貫でした。

ハー氏は非難にさらされる中、あるサミットに出演し、自分の研究について正当化を試みました。「HIVに感染している人たちへの差別に対抗できた勝者」であると、自らを位置づける発言をしています。HIVウィルスの感染機序の一つとして知られているCCR5遺伝子を標的とした、自分の研究に「誇り」を感じるとも述べているのです。

科学者コミュニティーはモラルの面だけでなく、純粋な科学の視点からもそれに納得していません。ハー氏の公演を聞いていた科学者たちの中には、彼の研究の技術的側面へ疑問を投げかける人もいました。ハー氏の研究の最も大きなほころびを明らかにしたのが、オーストラリア国立大学のゲタン・ブルジョ氏です。

いいですか?ハー・ジェンクイ氏が遺伝子編集サミットで行った、双子の赤ちゃんルルとナナの誕生へとつながる人の胚へのCRISPR実験に関する公演とパネルディスカッションを紐解くために、知っておいたほうが良い多くの情報があります。それに関わる科学と、倫理、論点を解析しましょう

 

それから、彼らは未分化な細胞と、ワールドゲノムシーケンスのデータに当たっています。胚の70%には編集により一連の欠損や挿入がありますが、標的外への影響はありません。しかし、embryo4.1には、明らかな標的内の欠損を見つけています。当然ありうることです。

ここでの問題は、使われたWGSを用いる方法では、大きな欠失やモザイク、対立遺伝子の欠落を除外するには十分ではないということです。この方法は遺伝子配列を包括するように見えますが、標的内の効果が検出されないことがあるのは心配です。つまり十分ではないのです。

ブルジョ氏は言います。「詳細に見るとわかるのですが、彼らが標的と意図したものが標的となっていません。彼らがCCR5遺伝子を標的にしたのは確かです。しかし実は、HIVウィルスへの耐性を表す領域が標的にされてないのです」ブルジョ氏によると、少なくとも双子のうち一人はHIVへの耐性を全く得られていない可能性もあるというのです。

ハー氏に見られる欠点として顕著なのは、「対立遺伝子モザイク」として知られる現象を知らないことです。遺伝学においてモザイクというのは、一つの個体において、異なる遺伝子型をもった細胞が2種類以上混在することを意味します。対立遺伝子とは遺伝暗号において重要な部分で、目の色のような特徴的な性質を決めているDNAの変化のことです。目の色と同じで、CCR5遺伝子には、幅広い種類の変化型が存在する可能性があります。モザイクの影響を除外しても、遺伝子に働きかけることは様々な結果を生み出す可能性があります。全く影響のないものから、深く危害を加えるものまで様々です。

ハー氏の不明瞭さは、双子の遺伝子に何が起こったのかわからないと言っているのと同じですと、ブルジョ氏は言います。

また、他にも重大な問題点としてあげられるのが、こういった危険を伴う研究において重要な、インフォームドコンセントが両親に対してなされていたかということです。両親がサインをした同意書が、他の科学者から厳しい批判を受けています。それはまるで、企業が子会社に対して使うたぐいのビジネスライクなもので、施術に伴うリスクを軽視したものでした。

「もし、これがマウスに行なわれたとすれば、何ら心配することはないでしょう。しかし、私達は人間の子供について話しているのです。」ハー氏の動機について、ブルジョ氏は、この科学的発見を達成した最初の一人になることでしょうと、感じています。ハー氏がHIVの親に対して心から心配していた可能性に対しては、もっと安全に子供を授かる方法があることを強調して一笑に付しています。

 

ハー氏はサミットに姿を現して以来、姿をくらませています。ハー氏が2月以来休んでいた彼の大学は、彼の研究については認識していなかったといいます。もしかしたら、今後金持ちに雇われた闇学者として追われる身に…というのは勝手な妄想ですが、彼の今後の動向に注目です。

 

中国の科学者が「遺伝子編集でHIV耐性を持つ女児が生まれた」と報告 倫理面では強い反発の声も 

 

via: Popular Mechanics/ translated & text by SENPAI

 

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