「がん」がワクチンで防げる? がんワクチン療法に革新をもたらす発見

life 2018/12/07

Point
・がん細胞には、正常な細胞には発現しないがん抗原が提示されており、T細胞の攻撃の標的となっている
・免疫によるがんの抑制を促進するがんワクチンの研究で、実際に機能する抗原がマウスの研究で発見される
・この抗原は、DNAの遺伝情報を含まない領域から異常に作られたもので、免疫原性がある

がんワクチン療法というアイディアは、50年以上前から研究されてきています。しかし、がんワクチンがどのように効いてくるのか、はっきりとした証拠は今までありませんでした。

しかしモントリオール大学のがん免疫研究所(IRIC)のチームが、がんにワクチンが効くことを証明しました。彼らの発見は、効果が高いだけでなく、非侵襲的でコスト効率も高いがん治療のための強力な武器になるかもしれません。研究は“Science Translational Medicine”で発表されています。

Noncoding regions are the main source of targetable tumor-specific antigens
http://stm.sciencemag.org/content/10/470/eaau5516

正常な細胞には発現せず、がん化した細胞にだけ出現するがん抗原が発見されて以来、この分野は世界中で研究されており、研究者たちはしのぎを削っています。その中で、IRICのチームが目を向けたのが、DNAの遺伝情報を持たない領域でした。

免疫細胞は、がん細胞を攻撃して抑えることができます。T細胞ががん細胞を特異的に見つけて攻撃し、破壊するのです。その際に、T細胞が標的にするのが「がん抗原」で、がん細胞の表面に提示されます。しかし、免疫系ががん抗原を見つけている場合でも、リンパ球を刺激してがん細胞を排除する働きは十分ではありません。

Photo credit: Microbe World on Foter.com / CC BY-NC-SA

そこで免疫系が効果的にがん細胞を排除できるように、効果的ながん抗原を見つけることが、がんワクチン研究の焦点となっています。こういった抗原は、欠陥をもつ遺伝子から生まれていたため、今までの研究で標的になっていたのは遺伝情報としてDNAに書き込まれた抗原やタンパク質でした。しかし、その取り組みは成功していません。

遺伝情報が書き込まれているのは、全DNA配列の内たった2%です。それ以外の領域は、メチル化によって沈黙しています。IRICのチームが注目したのは、その98%ある遺伝情報を持たない領域です。

研究では、がん細胞を注入されたマウスが使われました。実験では、遺伝情報を持たないDNA領域から生まれた、多数の抗原を発見することに成功しています。そのうちのいくつかは、がん細胞に特異的であると同時に、異なるがん種で共通したものでした。

その複数の抗原を含んだ白血病細胞を基にしたワクチンを作って、マウスに投与。その結果は素晴らしいものでした。

テストした抗原は種類によっては、10%から100%の白血病を取り除くことに成功。さらに抗原のうちいくつかは予防の効果さえも持っており、新たな白血病のがん細胞を注射しても病気になりませんでした

また、同種の抗原は、ヒトの白血病細胞でも見つかっています。IRICのチームは、白血病と肺がんのワクチンを今後の研究の中心に考えています。というのも、変異の数という点において両極端の特徴を持つからです。少ない変異で起こる白血病の治療に有効だったことから、他の種類のがんに対する有効性も有望なものだと考えているのです。

ヒトのワクチンを作るにあたって、がんの種類に応じた物を作る必要もないかもしれません。今後、2,3年内には臨床試験が行えるのではないかと、研究を率いたクラウデ・ペレート氏は述べています。

今回発見された抗原をベースにしたがんワクチン治療が開発されれば、がんの医療は劇的に変わるでしょう。治療はシンプルなものになり、費用も抑えられると同時に、激しい副作用を伴う化学療法で苦しむこともなくなるでしょう。

 

ノーベル賞を受賞した本庶教授の研究同様、人間が本来持っているがんを抑制する免疫の能力を利用した治療法での発見が続いています。将来、がんの治療は今までのような苦しいものではなくなり、誰もが治る病気になるかもしれません。

 

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via: Medical Press/ translated & text by SENPAI

 

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