biology

「生物学的なウィルス」を活用した高速コンピューターを開発

2021.01.27 Wednesday

2018.12.20 Thursday

Credit: ktsimage/iStock
Point
・バクテリアを攻撃するウイルスの一種「M13バクテリオファージ」を活用して、高速コンピューターを作れる
・ランダムアクセスメモリとハードドライブという分離した記憶システムを、単一の「相変化メモリ」に置き換えることで処理時間が短縮
・M13バクテリオファージに作らせた特殊な成分で、データ保管庫の一種である相変化メモリを解除できる

コンピューターは、データを保管する際、情報をハードウェアのある部分から別の部分に伝達するため、ほんの一瞬停止する必要があります。

この停止が「今後は不要になるかも?」と思わせてくれるような新研究が行われました。マサチューセッツ工科大学とシンガポール工科設計大学の研究チームが、情報伝達の遅延を最小限に抑えたコンピューターの新たな設計方法を発見したのです。

Biological-Templating of a Segregating Binary Alloy for Nanowire-Like Phase-Change Materials and Memory
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsanm.8b01508

■生物学的ウイルス「M13バクテリオファージ」を利用

その鍵はなんと、ウイルス…といってもコンピューターウイルスではなく、生物学的意味でのウイルスです。バクテリアを攻撃するウイルスの一種「M13バクテリオファージ」に作らせた特殊な成分で、データ保管庫の一種である「相変化メモリ」を解除することで、処理速度を上げられるとのこと。なんとも斬新です。

この仕組みの背景には、コンピューター内部におけるデータの伝達方法が関係しています。処理速度は速いものの、一時的なランダムアクセスメモリから、ハードドライブの永久保管庫にデータを移すには、1000分の数秒が必要です。この2つに分離した記憶システムを、単一の全対応タイプの相変化メモリと置き換えることで、データの移行速度を1億分の1秒ほど削ることができるのです。

コンピューターを作るのにウイルスを使うなんて、「人に感染したらどうするの?」とちょっと不安になりますが、心配ご無用。M13バクテリオファージは、バクテリアだけに感染し、人体には無害です。

次ページ■実用に向けクリアすべき課題も

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

生物学のニュースbiology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!