「生物学的なウィルス」を活用した高速コンピューターを開発

technology 2018/12/20
Credit: ktsimage/iStock
Point
・バクテリアを攻撃するウイルスの一種「M13バクテリオファージ」を活用して、高速コンピューターを作れる
・ランダムアクセスメモリとハードドライブという分離した記憶システムを、単一の「相変化メモリ」に置き換えることで処理時間が短縮
・M13バクテリオファージに作らせた特殊な成分で、データ保管庫の一種である相変化メモリを解除できる

コンピューターは、データを保管する際、情報をハードウェアのある部分から別の部分に伝達するため、ほんの一瞬停止する必要があります。

この停止が「今後は不要になるかも?」と思わせてくれるような新研究が行われました。マサチューセッツ工科大学とシンガポール工科設計大学の研究チームが、情報伝達の遅延を最小限に抑えたコンピューターの新たな設計方法を発見したのです。

Biological-Templating of a Segregating Binary Alloy for Nanowire-Like Phase-Change Materials and Memory
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsanm.8b01508

■生物学的ウイルス「M13バクテリオファージ」を利用

その鍵はなんと、ウイルス…といってもコンピューターウイルスではなく、生物学的意味でのウイルスです。バクテリアを攻撃するウイルスの一種「M13バクテリオファージ」に作らせた特殊な成分で、データ保管庫の一種である「相変化メモリ」を解除することで、処理速度を上げられるとのこと。なんとも斬新です。

この仕組みの背景には、コンピューター内部におけるデータの伝達方法が関係しています。処理速度は速いものの、一時的なランダムアクセスメモリから、ハードドライブの永久保管庫にデータを移すには、1000分の数秒が必要です。この2つに分離した記憶システムを、単一の全対応タイプの相変化メモリと置き換えることで、データの移行速度を1億分の1秒ほど削ることができるのです。

コンピューターを作るのにウイルスを使うなんて、「人に感染したらどうするの?」とちょっと不安になりますが、心配ご無用。M13バクテリオファージは、バクテリアだけに感染し、人体には無害です。

■実用に向けクリアすべき課題も

ところが、この方法には課題もあります。相変化メモリを作るには、その基材である化合物半導体の一種「アンチモン化ガリウム」を高温に熱して破壊する必要があります。ですが、ウイルスを使ってアンチモン化ガリウムの破片を配線の中に引き入れようとすると、その温度はずっと低くなってしまうのだとか。

この課題が将来的に解決されれば、私たちはこれまで失っていたかもしれないわずかな時間を取り戻し、今よりさらに生産的な生活を送れるようになるかもしれません。ただし、「SNS中毒から抜け出すことができれば」の話ですが…。

 

現在、人体へのコンピューターチップ埋め込みに代表される「生物とコンピューターの境界線消失」のきざしに、世間の熱い注目が集まっています。それには「生物の中にコンピューターを組み込む」パターンだけではなく、この研究のような「コンピューターに生物を取り込む」パターンのイノベーションも含まれています。境界線の喪失は、「生物⇄コンピューター」と双方向的に進行していきそうですね。

 

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referenced: sciencealert / written by まりえってぃ/ edited by Nazology staff

 

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