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子宮は認知能力に影響する? 妊娠・出産以外の子宮の意外な役割とは?

2021.01.27 Wednesday

2018.12.18 Tuesday

Point
・子宮を摘出したラットは作業記憶に障害をきたすことが判明
・子宮を摘出すると、卵巣と神経の接続システムが混乱し、残された卵巣が異なるホルモンを作り出して混乱を正常化しようとする可能性
・同じ事実がヒトにも当てはまるかどうか、長期的な影響があるかどうかは明らかになっていない

この世に生まれ出る前の赤ちゃんが育つ部屋「子宮」—。妊娠・出産時を除き、この臓器がスポットライトを浴びることはあまりありません。

しかし最近の研究で、子宮が果たす意外な機能に着目が集まっています。子宮を摘出することで、記憶や認知に大きな影響が出るというのです。

研究を行ったアリゾナ州立大学の研究チームは、子宮を摘出したラットは作業記憶に障害をきたすことを発見しました。作業記憶とは、情報を一時的に保ちながら操作・更新していく過程のこと。この研究は、生殖システムや、子宮摘出などで生殖システムが変化することが、ヒトの認知能力にどのような影響を与えるかを知るための布石になるかもしれません。論文は、「Endocrinology」に掲載されました。

■子宮は日陰の存在?

病気などの理由で、女性が閉経前に子宮などの摘出手術を受けることは珍しいことではありません。子宮だけを摘出する人もいれば、子宮と卵巣の両方を摘出する人もいます。

卵巣と子宮は、どちらも妊娠・出産の際に重要な役割を果たしますが、これまでの研究は、卵巣ばかりに注目してきたと言っても過言ではありません。卵巣が作り出すエストロゲンなどのホルモンが、脳の神経構造を保護する役割を持つだけでなく、心臓や血管、肌、骨の健康を促進することが示されてきました。

一方、子宮は日陰の存在であり続け、子宮・卵巣・脳の相互関係に関する本格的な研究はようやく始動したところなのです。

研究チームは、60匹のラットを4つのグループに分けてさまざまな手術を施しました。グループ1は子宮のみを、グループ2は卵巣のみを摘出する手術を受けました。また、グループ3は子宮と卵巣の両方を摘出する手術を受け、グループ4は腹部を切開するだけで臓器は摘出しない「偽手術」を受けました。

研究チームは手術後6週間が経過した時点で、ラットの空間記憶と作業記憶を調べるため、水中迷路を用いた実験を行いました。迷路の中心にある円盤から出ている8つのアームのうち、4つのアームの先にはデッキが付いていますが、残りの4つのアームには何も付いていません。

ラットに与えられたタスクは、スタート地点の円盤から水掻きをしながらアームを進み、デッキがある場所に到達することです。まず、円盤のスタート地点から出発したラットが1つのデッキにたどり着くと、そのデッキとラットは迷路の外に出されます。その後、再び円盤のスタート地点に戻されたラットは、残りのデッキを探します。

Credit: IrinaK/Shutterstock

試されるのは、方向に関する手掛かりや、デッキを取り除くことで迷路に加えられる変更点を記憶するラットの能力です。実験の結果、グループ1のラットは、他のグループに比べて作業記憶が劣っていることが判明しました。

次ページ■子宮の摘出で卵巣との接続システムが混乱

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