痛みを伝える「未知の伝達経路」を発見! 持続する痛みの原因か?

life 2018/12/13

Point
・痛みには、瞬間的に伝わり反射を促すものと、継続して起こりケア行動を促すものがある
・有害刺激の伝達に関わっているTac1遺伝子を操作して抑えたマウスでは、ケア行動が起こらなかった
・継続的な痛みを伝える神経経路を標的とすることで、新たな鎮痛剤が生まれる可能性

転んでスネをぶつけた時、あなたの体はどう動きますか? 恐らく、無意識にその箇所に手を当てますよね。また、ドアに挟んだ手を振ったりもします。こういった、「ぶつけた瞬間よりも後に感じる痛み」は、最初に感じる痛みとは全く別物かもしれません。

マウスで新たに見つかった神経回路は、最初に感じる痛みが消えた後に経験する、継続する痛みを伝えている可能性が発見されました。この発見によって、ある種の鎮痛剤が期待通りに効かない理由がわかるかもしれません。研究はハーバード大学医学部で行なわれ、12月10日付けでNatureに発表されています。

Identifying the pathways required for coping behaviours associated with sustained pain
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0793-8

小指を机の角にぶつけたり、足裏にトゲがささったり、熱い調理器具を触った時…。これらの反応はどれも同じです。つまり、反射的に痛みが発生した原因から距離を取るように反応します。この時に感じる瞬間的な鋭い痛みを「侵害受容」と言います。

この最初の激しい痛みの後に、損傷の程度に応じた、数秒から数日間持続する痛みが続きます。私たちは、この継続的な痛みを抑えるために、傷口に圧力をかけたり、冷やしたりするのです。

研究者たちは、これら2種類の痛みが違った経路で伝わるのではないかと疑問を抱きました。痛みが「侵害受容器」と呼ばれる感覚神経から、様々な経路を通って脊髄や脳に伝わるのは間違いありません。しかし、その経路がどのようなものかは、実は分かっていないのです。

「侵害受容」の経路とは異なる経路を明らかにするために、研究チームは、有害刺激と関連した脊髄神経に注目しました。これらの神経では、Tac1と呼ばれる遺伝子が発現しており、重要な働きをしていると考えられています。この遺伝子の発現を操作することで、痛みの伝達が変わるのではないかと考えました。しかし、ヒトの神経を使って実験するのは問題があるため、マウスで実験を行いました。

奇妙なことに、Tac1遺伝子を操作したマウスでも痛みは伝わっているようでした。足を突いたり、つねったりマスタードオイルに曝したりすると、明らかな忌避反応を示したのです。

しかし、Tac1遺伝子がちゃんと働いているマウスとは違って、これらのマウスは傷害を受けた皮膚をなめて癒そうとしませんでした。つまり、これらの脊髄神経は、脳に対し「物理的な損傷が起こっている」という情報を伝えている可能性があるのです。

神経をたどって調べたところ、さらに他とは明らかに異なる神経があることが分かりました。つまり、痛みの元から伝わる、明確な伝達経路があることが示されたのです。

それらの神経は、TrpV1と呼ばれるカプサイシン受容体を持っていることから、すでによく知られたものでした。熱の感覚を与える温度や香辛料に反応するだけでなく、炎症によって放出される化学物質の存在下で感度が上がります。

最初の強い痛みを伝える経路と、継続的な不快感を伝える経路がはっきり異なっていたことから、動物実験で良い成績だった痛み止め候補が、継続的な各種の痛みを緩和できないことを説明できます。多くの痛み止めの実験は、最初の痛みに対する反射的な反応しか見ていなかったのです。

 

実験がマウスによって行なわれているということで、研究には限界もあります。マウスに対し、「どうして傷を舐めないのか」と理由を聞くことはできません。しかし、痛みを伝える別の経路があることが、今後の研究で確証されれば、この経路を標的とした新しい種類の鎮痛剤の開発にも役立ちます。痛み止めが効かないで苦しんでいる人たちにとって、福音となることを期待しましょう。

 

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via: Science Alert/ translated & text by SENPAI

 

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