人は思い込みで死ぬ。 試験用の偽薬プラセボで「副作用」が発生

life 2018/12/13
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Point
・プラセボとは、臨床試験のための対照群に対して使われる、効果も害もまったくない偽薬のこと
・プラセボを与えられた試験参加者のうち、半分に何らかの有害事象が発生していたことが試験のレビュー研究でわかる
・原因は、有害事象の原因を試験に結びつける「誤った信念」によるもの、あるいは有害事象に見舞われるのではないかという「悲観的な信念」による逆プラセボ効果によるもの

オックスフォード大学などによる新しい研究で、無害なプラセボ薬を処方された被験者に対する影響を調べる臨床実験が行われました。そこでは驚くことに、試験の介入によってプラセボを飲んだ参加者の半分に何らかの副作用があったことが報告されており、ネット上に衝撃が広がっています。研究はTrialsで発表されています。

Rapid overview of systematic reviews of nocebo effects reported by patients taking placebos in clinical trials
https://trialsjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13063-018-3042-4

新たな研究で示されたのは、臨床試験で無害な糖衣錠剤といったプラセボ薬を飲んだ参加者たちが、試験のための介入によって起こる「有害事象」によって苦しんだということです。

さらに、プラセボを飲んだ20人に1人がひどい有害事象によって、試験から脱落していたことが発覚。研究で使われたデータは、1271回のランダム化比較試験に参加した250,726人のものであり、十分な数があります。有害事象は、軽いものでは腹痛から食欲不振、胸焼け、疲労などで、ひどいものでは、なんと死に至ったものまであります

単なる糖衣錠がこのようなひどい副作用をもたらすとは、信じがたいことです。その原因は、試験の結果として現れる事柄についての「誤った信念」や、「悲観的な信念」です。

試験に参加した人に腹痛が起こるには、人それぞれ様々な原因があります。その原因は試験とは関係ないものでしょう。しかし、参加者は試験に参加しています。そのため、試験による介入によって痛みが起こったという「誤った信念」を持ってしまうのです。そして、その訴えは有害事象として記録されることになってしまいます。

ときには、参加者は有害事象について事前に警告を受けることがあり、それが自分に起こると信じてしまうことがあります。その信念によって、実際にその有害事象が引き起こされるということもあるのです。悲観的な期待による効果は、「ノシーボ」と呼ばれており、つまりは、逆プラセボ効果とも言うべきものです。

Photo credit: destinyuk* on Foter.com / CC BY-NC-ND

今回の研究ではデータ以外にも、このノシーボ効果が見られた研究があります。例えば、スタチンと呼ばれるコレステロールを低下させる薬がありますが、これは「筋繊維の融解」という重篤な副作用を起こすことがあります。スタチンの試験をしていることを知っていた参加者たちは、より高頻度で有害事象報告を行っており、何も知らない場合には、筋肉に関わる有害効果の増加は見られていません

試験の質を上げるためには、こういったプラセボ対照群内での有害事象を減らさなければなりません。また、そうすることで試験の倫理的な面も改善するでしょう。では、改善の方法はあるのでしょうか?

「誤った思い込み」を避けることは難しいです。というのも、その症状が試験による介入で起こったものなのか、あるいは試験に参加する条件として、自分がもともと持っている病気などの条件によって引き起こされたのか、区別できないからです。

しかし、「悲観的な信念」によるノシーボ効果を減らすことはできそうです。例えば、新しい治療法は90%の患者にとって安全であると伝えるのと、10%の確率で頭痛のような有害事象が起こると伝えるのでは、内容は同じなのですが、後者の方で有害事象が増えるということは有り得るでしょう。

残念ながら、介入による有害事象をノシーボを排する方法によって試験参加者に伝えるためのガイドラインは、現在まだ研究段階のようです。

 

プラセボ効果やノシーボ効果の話を聞くと、人間の持つ思い込みの力に驚いてしまいます。おそらくは、思い込みの方向によって免疫の強さが変わるためだと思うのですが、真実はどうなんでしょうか。臨床試験にとっては厄介な問題ではありますが、この力を利用してポジティブに生きることが、健康に生きる秘訣かもしれませんね。

 

想像力の影響は絶大。音を想像するだけでネガティブな経験が「消去」できるという新研究

 

via: BMC/ translated & text by SENPAI

 

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