生物が自然淘汰しても多様性を失わない原因は「性別」にあった

biology 2018/12/14
Credit: CC0 Public Domain
Point
・自然淘汰が進めば多様性は失われそうだが、そうなっていない理由は議論の対象となっている
・性があることで、オスとメスで遺伝子の異なる現れ方が許され、遺伝子の多様性が保存されるという説がある
・遺伝的に多様なマメゾウムシの系統を掛け合わせる実験で、それぞれの性での遺伝子の優性度、劣性度から、性に応じた優性変換が明らかになり、性によって多様性が保存されている初の証拠となる

100年もの間、生物学者たちはどのようにして自然選択が機能しているのかを議論してきました。もし、自然選択が最良の遺伝子を持った個体を選ぶとするなら、すべての生物は同じような「ベストな遺伝子」を持ちそうなものです。

しかし、地球上の生命は驚くほどの多様性で満ちています。それでは、自然選択が働いた上で、なおかつ遺伝子の多様性を保っている仕組みはどのようなものなのでしょうか。ウプサラ大学の最新の研究によると、その多様性の鍵は「性」にあるようです。研究は12月11日付で“PLoS Biology”に発表されています。

Sex-specific dominance reversal of genetic variation for fitness
https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.2006810

進化遺伝学の理論では、「遺伝子の多様性が保たれるのは、同じ遺伝子がオスとメスで違ったバージョンを持ち、性によってその現れ方が異なるものが選択される時である」という説があります。つまり、多くの遺伝子において、普遍的にベストなバージョンはなく、むしろ、オスに最適なバージョンとメスに最適なバージョンがあるということです。

この説は「性的対立による遺伝的多様性」として知られていますが、この仕組は条件の幅が狭いときにだけ維持できるもので、自然界に行き渡っていない可能性も指摘されていました。しかし、新たな研究がこの見解を変えるかもしれません。

Photo on Foter.com

「適応に関わる遺伝的多様性を維持するための性的対立による選択の最も簡単な方法は、性に特異的な優性転換を介することです。こういった遺伝子のバージョンには、どちらの性でも優性あるいは劣性になるものはなく、むしろ割り当てられた性で有利なものが、その性では優性になります。よって、あるバリエーションが優性であるのか、劣性であるのかは、そのバリエーションを持つ個体がどっちの性別であるのかに依存するのです」と、研究を行ったカール・グリショップ博士は説明します。

この仕組みは、最初は懐疑の目で見られていたものの、最近は理論的、経験的な支持を受けるようになってきていました。しかし今回の研究で、グリショップ博士らは、適応に関わる性特異的な優性転換における初めての証拠を得たのです。

博士は博士課程時代を通して、異なる遺伝系統を持った一団のマメゾウムシを使った研究を行ってきました。これらの系統間での交雑を解析することで、どの系統が他の系統よりも優性で、遺伝的な多様性を保っているのかを決定することができます。また、同じことをオスの適応度とメスの適応度を分けて決めることもできます。

そして、優性度に応じて系統をランク付けることで、その系統の全体に対する優性度の傾向をオスの適応度と関連。そして同時に、劣性の程度をメスの適応度と関連することで、それぞれの優性度を明らかにすることに成功しました。

また、各系統における適応に関わる遺伝子のバリエーションが、他の系統と比べて優性であるか劣性であるか、ということが、それがオス内でのことか、メス内でのことかによって全く正反対の関係になっているということです。

Credit: Karl Grieshop et al.

調べたパターンが示していたのは、性に特異的な適応に関わる優性転換が、研究した集団内のゲノムにおいては、強力で一般的な現象だったということです。

 

もし、性によって遺伝子の多様性が保存されていることが本当だとすれば、「性」というものが進化した謎の一端が解けたことになるでしょう。生育環境が激変する可能性がある中で、生物が一斉に絶滅せずに生き残るには、多様性が担保されていなければなりません。よって、遺伝的に弱い形質も、性によって保存されたのだと考えられます。性によってこれほど豊かな自然が生まれたのであれば、男女間に生まれる「愛」も、さらに特別なものに思えてきませんか?

 

メス同士のマウスから赤ちゃんを生み出すことに成功 

 

via: Phys.org/ translated & text by SENPAI

 

SHARE

TAG

biologyの関連記事

RELATED ARTICLE