「-23℃」の高温超電導を達成! 夢の常温超電導に一歩近づく

technology 2018/12/15
Photo credit: Argonne National Laboratory on Foter.com / CC BY-NC-SA
Point
・超電導は電気抵抗がゼロになるとともに、ピンどめ効果を与えるなど応用範囲は広いが、低温下でしか実現できていない
・高圧の水素化ランタンによって、-23℃での高温での超電導を達成したとの主張
・論文の査読や、追試による検証はまだだが、今現在の最高温度を達成した研究者によるもので信憑性は高い

ドイツの科学者たちが、高温超伝導の新記録を達成したと主張しています。プレプリントサーバの“ArXiv”で発表された論文によると、250Kつまり-23℃での史上最も高い温度での、電気抵抗ゼロが達成されました。

Superconductivity at 250 K in lanthanum hydride under high pressures
https://arxiv.org/abs/1812.01561

まだ他の研究者による確認は取れていませんが、この主張は現実味があります。というのも、発表したのがマックスプランク研究所の物理学者ミカイル・エルメッツ氏で、2014年に203Kの高温超電導を達成したその人だからです。

1911年に初めて発見された超電導は、なんとも奇妙な現象です。通常、導体を流れる電流には抵抗がかかり、流れるほどにロスが増えます。しかし、ある種の材料を冷やしていくと奇妙なことが起こります。電気抵抗がゼロになり、電流は抵抗無しで動けるようになるのです。

もし、電気抵抗ゼロ、かつマイスナー効果と呼ばれる効果も持つ場合、それは超電導と呼ばれます。マイスナー効果とは、磁場が浸透しなくなると同時に、内部にあった磁場が排出される現象です。ピンどめ効果を持つため、浮遊した磁性体のイメージとして一般に知られています。

科学者たちにとって、常温での超電導を達成することは悲願です。もし達成できれば、応用範囲は広く、社会を変えるだけのインパクトがあります。世界中の科学者たちが、この課題に取り組み、最高温度を記録したことを報告しては、再現性が確認されずに失敗するということが繰り返されています。

エルメッツ氏らの以前の研究で使った材料は硫化水素に150ギガパスカルという高圧をかけたものです。硫化水素は高圧をかけなければ気体で、卵の腐った匂いがします。新たな研究では、水素化ランタンが使われました。170ギガパスカルの圧力がかけられています。今年はじめの報告では、この物質で-58.15℃の超電導を達成したとされています。それからわずか数ヶ月でその温度を35℃も上げたというのです。

この新しい記録である-23℃は、冬の北極点の平均気温の半分です。この達成により、常温超電導へ一歩近づいたことになります。

しかし、この結果はまだ科学者コミュニティーによる検証にかけられていません。論文も現在査読を待っている状態です。

超電導が認められるには、3つのテストを通過する必要がありますが、研究チームが達成しているのはそのうちの2つだけです。1つ目は、ある閾値温度を下回った際の抵抗値の減少です。2つ目が、材料に別の物質を混ぜたことによる超伝導温度の低下です。この2つは達成されています。

3つ目は、マイスナー効果を持つかどうかです。確認できていないのは、研究者たちが作ったサンプルが非常に小さいため、磁力計での検出ができなかったためです。しかし、超電導温度まで下げたときに、外部の磁場への影響を観察しています。直接の証拠ではないですが、間接的にマイスナー効果を示しているのです。どちらにせよ、今後の追試によって発見の真偽がはっきりするでしょう。

 

-23度は業務用の冷凍庫で冷やせる温度です。まだ確認段階ではありますが、グッと常温超電導が近づいてきた感じがします。ただ、かかっている圧力が半端じゃ無いので、実用化は厳しそう…。とはいえ、達成温度は着実に上っています。今後の研究に期待ですね。

 

本物か? 世界を一変させる「室温超伝導」の発見が報告されるも、疑惑の渦へ…

 

via: Science Alert/ translated & text by SENPAI

 

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