乾燥しても水に戻すと何度でも生き返る昆虫「ネムリユスリカ」のメカニズムを解明!

animals_plants 2018/12/21
Credit: hyoka.koho.titech
Point
■ネムリユスリカの幼虫は「乾燥耐性」を持ち、干からびても水を与えれば何度でも生き返る
■「乾燥耐性」を発現する各段階(トレハロース処理、乾燥、再水和)では、抗酸化因子の遺伝子、タンパク質翻訳に関わる遺伝子、DNAダメージを治す遺伝子の発現が変化
■ネムリユスリカの乾燥耐性は宇宙での実験にも利用されており、今後は人の臓器の保存技術の開発にもつながる可能性

アフリカには雨季と乾季があり、乾季には水たまりもすっかり干上がってしまいます。この水たまりには、昆虫ネムリユスリカの幼虫が住んでいるのですが、では乾季には一体どうやって生き延びるのでしょうか?

実はこの幼虫、干からびても雨が降れば何度でも生き返ることができるんです。

慶應義塾大学の山田助教らの研究グループは、このネムリユスリカの「乾燥耐性」に関与する遺伝子を発見、12月18日付で雑誌「Scientific Reports」に発表しました。

Transcriptome analysis of the anhydrobiotic cell line Pv11 infers the mechanism of desiccation tolerance and recovery
https://www.nature.com/articles/s41598-018-36124-6?WT.feed_name=subjects_biotechnology

驚異の乾燥耐性!Pv11細胞

ネムリユスリカの幼虫は、乾燥されると細胞膜などを保護するトレハロースを蓄積します。トレハロースは、よく甘味料として使用される糖の一種。その細胞保護のメカニズムは正確にはわかっていませんが、乾燥状態で水の代わりをするという説と、高濃度になるとガラス化して分子運動を低下させるという説があります。

そしてネムリユスリカの細胞からつくられた培養細胞Pv11も、トレハロースで処理すると乾燥保存できるようになるのです。他の培養細胞の保存法といえば凍結保存が一般的ですから、乾燥保存できるPv11細胞は、特別な能力をもった細胞といえるでしょう。

このPv11 細胞の能力発現は、トレハロース処理によって誘導され、乾燥されると代謝が停止し、そして水を含む培地を与えて再水和させると蘇生するという3つの段階があります。山田助教らは、この3つの段階でPv11細胞の遺伝子の発現がどのように変化しているかを解析しました。

解析の結果、1つ目の段階のトレハロース処理では過剰な酸化物質を分解する抗酸化因子の遺伝子が増えていたことが判明。2つ目の乾燥の段階では、タンパク質の翻訳に関わる遺伝子が減っており、3つ目の再水和の段階では乾燥によるDNAダメージを治す遺伝子が増えていました。以上から、こういった遺伝子の変化が乾燥耐性に必要であるという可能性がわかったのです。

「乾燥させても必ず生き返る生物」をつくれるようになるかも?

もし今後、さらに研究が進んで「これがあれば乾燥しても必ず生き返る」という遺伝子がわかれば、その遺伝子を導入することにより「乾燥させても死なない生物」を作れるようになるかもしれません。

また、乾燥耐性というネムリユスリカの性質は、人の臓器の保存など多くの利用法が考えられます。

ネムリユスリカは放射線にも強く、宇宙での実験にも使われています。2005年、ロシアはネムリユスリカを31か月間も宇宙空間に出しておきましたが、その後、無事に生還しています。今は宇宙という過酷な環境に耐えられる実験生物は限られていますが、「乾燥させても死なない生物」ができれば、今まで解けなかった生命の謎が解ける可能性もあるのです。

SF映画『パッセンジャー』では、宇宙移民のために宇宙船の中で人工冬眠する…という設定がありました。人間がネムリユスリカの能力を獲得できれば、乾燥保存されたまま宇宙旅行することで本当に遠い星へ移民できるようになるかもしれませんね。

 

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referenced:  keio, nature, yahoo  / written by かどや / edited by Nazology staff

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