お腹の中で兄弟が「共食い」!?オオテンジクザメの赤ちゃんの不思議な生態

animals_plants 2018/12/21
Credit: wikipedia / オオテンジクザメ
Point
■オオテンジクザメの胎仔が、1つの子宮から泳ぎ出て、もう1つの子宮へ移動することが判明
■最初の受精卵から孵化した胎仔が、受精前の卵を胎内で捕食することで、栄養を得ている
■出産前に子宮頚部が時々開き、そこから胎児が頭の先を覗かせる

お腹をキックする赤ちゃんの胎動に不思議な興奮を覚えるお母さんは多いことでしょう。

でも、子宮に退屈した赤ちゃんが、スイスイ泳いで別の子宮に移動して行ってしまうことを想像してみてください。こんな不思議な現象が実際に起きているのが、オオテンジクザメの母親の胎内なのです。

この説を発表したのは沖縄美ら島財団総合研究センターで、海洋生物を研究する冨田武照氏ら。論文は、12月17日付けで雑誌「Ethology」に掲載されました。

Locomotion is not a privilege after birth: Ultrasound images of viviparous shark embryos swimming from one uterus to the other
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/eth.12828

子宮から子宮へと移動するサメの赤ちゃん

Credit:Ethology

オオテンジクザメは、インド洋から太平洋のサンゴ礁がある浅い海に生息する体長3メートルほどのサメです。餌を吸い込む力が強力なことで知られ、沖縄の方言では「タコクワヤー」(タコ喰い屋)と呼ばれています。

サメの一部は、母親の胎内で成長した子ザメを出産する「胎生」を行いますが、オオテンジクザメもその一種です。また、サメの子宮は、卵を運ぶ2つの輸卵管の一部が変化してできているため、サメには2つの子宮があります。

冨田氏らは、水中超音波機器を用いて、妊娠中のオオテンジクザメの体を調べました。調査の結果、胎仔が1つの子宮から泳ぎ出て、もう1つの子宮へ移動するという衝撃の事実が判明。

さらに、移動後の胎仔がよく動き、片方の子宮の中にある胚の数が減っているのに対し、その分もう一方の子宮の中にある胚の数が増えていることが明らかになりました。哺乳類の胎仔は、生まれる前に子宮内でここまで活発に動くことはありませんので、これはオオテンジクザメに特有の現象です。

過去に妊娠中のシロワニを取り扱ったドキュメンタリー番組で、同じように子宮から子宮へと胎仔が泳いで移動する様子が報道されたことがありましたが、その時点では、シロワニの胎仔が普段からこのような行動を取るということを示す決定的な証拠は得られませんでした。

胎内で共食い「卵食」

オオテンジクザメやシロワニの胎仔が子宮内を泳ぎ回ることができる理由ははっきり分かっていませんが、どちらの種も「卵食」と呼ばれるプロセスによって胎仔に栄養を与えているのではないかと、研究チームは推測しています。最初の受精卵から孵化した胎仔が、受精前の卵を胎内で捕食する、いわば「共食い」を行うのです。時には、隣の子宮に移動してでも卵を食べることがあります。

しかし他の卵とは、言ってみれば自分の弟や妹ということで…。よく考えたらエグい話です。

さらに、出産前のオオテンジクザメの子宮頚部が時々開いては、そこから胎仔が頭の先を覗かせる様子も観察されました。きっと生まれる前に、外の世界の様子を覗き見ているのでしょう。先程のエグさがウソのように、ちょっぴりコミカルで可愛いお姿。こちらも、子宮頚部が出産時以外は閉じている哺乳類とは対照的です。

 

多様な繁殖様式を持つ、「繁殖様式のデパート」であるサメ。そのタイプも、海中に卵を産み落とす「卵生」、卵が母体内で卵殻内の卵黄を栄養として育つ「卵黄依存型胎生」、胚が母親が作った未受精卵の黄身を栄養源にする「卵食型」や、ヒトと同じように母親の胎盤を通じて栄養供給する「胎盤型」など様々です。弟妹を食べちゃうブラックな顔と、誕生前に外界をチラ見するキュートな顔の両方を持ち合わせたオオテンジクザメの赤ちゃんの姿からは、生命の奥深さと生き物の面白さを感じることができます。

 

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referenced: livescience, natgeo/ written by まりえってぃ / edited by Nazolozy staff

 

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