脳梗塞は治る病気になるかもしれない。死滅した脳細胞が再生、運動機能の再生などにも期待高まる

life 2019/01/03

Point
■新たに産生された脳内神経細胞を「障害部」へ移動・促進することで脳梗塞後の神経機能が回復する
■幼若な神経細胞は脳内の遠くまで移動できる
■移動に必要なタンパク質の生産性を増やすことにより、「障害部」の運動機能を回復させることに成功

昨年度(2016年)、日本人の死亡原因の2位は「脳梗塞(こうそく)」だといわれています。

脳梗塞とは、血管が詰まることなどにより、脳への血流が途絶えてしまい、酸素や必要な栄養分が行き届かず、神経細胞にダメージ(あるいは死滅)を与えてしまう症状のことです。1度死滅した脳細胞は基本的に再生することはありません。

1度発症すると、突然死や半身不随、重い障害が残るといわれる脳梗塞。大きな前兆もなく訪れ、かかったら回復の見込みも少ないこの恐ろしい病気ですが、今回、そんな暗闇を照らす、一条の光のような研究結果が報告されました。論文は12月13日づけでScience Advancesに掲載されています。

名古屋市立大学大学院教授の澤本和延氏、准教授の金子奈穂子氏らは、バレンシア大学ほかと共同で、マウスを用いた脳内の神経細胞の研究を行いました。実験により、脳内で新たに産生された神経細胞の「傷害部」への移動を促進することにより、脳梗塞後の神経機能が回復することを発見したのです

New neurons use Slit-Robo signaling to migrate through the glial meshwork and approach a lesion for functional regeneration
https://www.nips.ac.jp/release/2018/12/post_381.html

 

特定の領域でのみ生成される神経細胞をタンパク質が誘導!

成熟した脳内では、特定の領域だけで少数の神経細胞が作られています。幼若な神経細胞は、脳内を遠くまで移動することができ、脳梗塞後には傷害部に向かって移動して脳を再生しようとしますが、ダメージを受けた脳組織内では神経細胞は十分に移動することができません。

そこで同研究グループは、神経細胞がダメージを受けた組織内を移動するのに必要なタンパク質を特定して、このタンパク質の生産量を増加させることにより、神経細胞の傷害部への移動が促進されることを発見しました。

さらに、傷害部の近くに再生する神経細胞を増やすことで、運動機能を回復させることに成功。これは今までにない新しい発見です。

再生する神経細胞の配置を制御することが、脳機能の回復に重要であることを示したこの研究成果は、脳梗塞だけに止まらず、その他の脳傷害に対する再生医療の樹立の根幹として活用されていくでしょう。

脳梗塞による麻痺や脳障害など回復を諦められていた症状も、間もなく回復可能なものとして前向きに捉えられる時代がくることは間違いなさそうです。

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reference: Science Advances / written & edited by Nazology staff

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