植物が動かなくても環境に適応できるのは「記憶」のおかげ、タンパク遺伝子が鍵

animals_plants 2018/12/30
Point
■移動することのできない植物が、環境の変化に適応できるのは「記憶メカニズム」を持っていることによる
■気候サイクルを覚えておく鍵となるのは「VRN2」と呼ばれるタンパク遺伝子の活動
■VRN2は冬に安定し生存率を高め、春に崩壊することで開花へのシグナルを出している

地面に根ざして移動することのない植物がどうして過酷な環境の変化に適応できるのか。それは研究者たちの間でも大きな謎とされてきました。

ところが今回、植物は環境変化のサイクルを覚えておくことのできる「記憶メカニズム」を持っていることが判明したのです。

植物は記憶を使うことで、自らの生態のリズムをコントロールして環境変化に対する事前の準備を行っていたのです。

バーミンガム大学とノッティンガム大学のこの共同研究は、12月21日付けで「 Nature Communications」上に掲載されています。

Oxygen-dependent proteolysis regulates the stability of angiosperm polycomb repressive complex 2 subunit VERNALIZATION 2
https://www.nature.com/articles/s41467-018-07875-7

研究チームは、植物の記憶能力を証明するものとして「ポリコーム抑制複合体2(PRC2=polycomb repressive complex 2の略)」と呼ばれるタンパク群に注目しました。

植物は寒さの厳しい冬の時期には花を咲かせず、春先の温暖な気候が戻ると一挙に開花段階に移行します。このサイクルの記憶を可能にしているのが「PRC2」遺伝子なのです。

「PRC2」は冬になると互いに寄り集まり複合体を形成することで、開花段階への前準備をします。環境変化によるストレス過多に対処することで、気候状況に見合った成長を調節することができるのです。

タンパク質「VRN2」が開花の引き金に

しかし、これまで「PRC2」がいかにして気候の変化を察知しているのかは謎のままでした。

そこで研究チームはオックスフォード大学とユトレヒト大学と協力して、「PRC2」の「環境変化探知機能」を新たに調査。すると、「PCR2」複合体の中心核となっている「VRN2」というタンパク遺伝子が、極端に不安定な動きを見せることが発見されたのです。

「VRN2」は気候が温暖で酸素量も豊富な時期になると継続的に崩壊していきます。ところが、洪水や低酸素といった過酷な環境下に置かれると突如として安定し、植物の生存率を高めていたのです。

また「VRN2」は冬になると蓄積を繰り返します。そして蓄積した「VRN2」が崩壊することが、温暖な気候に戻ったときに開花するよう「PRC2」に合図する引き金となっていたのです。

同研究チームの主任研究員であるバーミンガム大学のダニエル・ギブス氏は「気候を探知して崩壊と蓄積を行う『VRN2』遺伝子こそが植物の記憶能力を可能にしているのだ」と説明しています。そして「VRN2」崩壊のサインが出るまで、「PRC2」は不活性の状態を保っているのです。

 

今回の研究で、植物の記憶メカニズムは「VRN2」の崩壊と安定のサイクルが鍵となっていたことが発見されました。「PRC2」は動物の体内にもありますが、不安定な活動を繰り返す「VRN2」は植物だけに存在します。

植物が動かなくても生きることのできる体になっているのは、「PRC2」と「VRN2」遺伝子の利口な働きによるのでしょうね。

植物にウサギのDNAを混ぜたら「生きる空気清浄機」になった 

referenced: eurekalert / written by くらのすけ / edited by Nazology staff

SHARE

TAG

animals_plantsの関連記事

RELATED ARTICLE