もう「プラスチックは悪」なんて言わせない。微生物を使用した「バイオプラスチック」とは

chemistry 2018/12/29
Point
■海洋汚染の90%がプラスチックの無断廃棄によるもので、生態系にも被害が出ている
■テルアビブ大学の研究チームが、微生物を使用した生物分解性のバイオプラスチックを開発
■バイオプラスチックは、海に捨てられても微生物によって即座に消費されるため、海中に蓄積することもない

現在、環境汚染の大きな原因となっているのが、プラスチックの無断廃棄。世界の海洋における汚染物質の実に90%がプラスチックによるもので、生態系にも被害が続出しています。

この問題を解決するべく、イスラエルのテルアビブ大学は化石燃料の代わりになる微生物から得られるポリマーを使った「バイオプラスチック・ポリマー」を開発。地球にやさしいプラスチックが誕生しました。研究の詳細は2019年1月号の「The journal Bioresource Technology」に掲載されています。

Macroalgal biomass subcritical hydrolysates for the production of polyhydroxyalkanoate (PHA) by Haloferax mediterranei
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960852418313610?via%3Dihub

生物由来のプラスチックを考案

一般にプラスチックは、腐食するのに数百年もの年月を要し、海に捨てられたプラスチックは山のように蓄積していきます。

海上に浮いたプラスチックを口にしてしまう動物も多く、オーストラリアの海岸に打ち上げられたウミドリを解剖してみると、なんと234ものプラスチック片が体内から検出されたのです。

また、石油燃料からつくられるプラスチックもあり、その生産過程の副産物として化学物質が排出されることで環境汚染の一因ともなっています。

そこで同研究チームのアレクサンダー・ゴルバーグ氏とマイケル・ゴージン氏は、微生物が体内に貯めているエネルギー物質「ポリヒドロキシアルカノエート(PHA=polyhydroxyalkanoate)」を使用したプラスチックを考案。

海藻を主食とする微生物は、豊富な塩分を吸収することで、バイオプラスチックに必要なポリマーの原材料を体内でつくり出すことができます。

この特殊なバイオポリマーでできたプラスチックは、生物分解性であるため、海に捨てられたとしても微生物によってすぐに消費され、海中に貯まることがないのです。

また、化石燃料も使用していないため、汚染物質を排出する心配もありません。

良い所だらけのバイオプラスチックにも課題が

しかしながら、バイオプラスチックが全面的に優れているかというとそうでもないのです。

というのも、バイオポリマーを生み出す微生物を育成するには、クリーンな水が大量に必要となります。これは深刻な水不足に悩まされている国にとっては重大な問題。

研究チームがあるイスラエルだけでなく、中国やインドなども同じ問題を抱えています。そのため、化石燃料からバイオマス資源への移行が難しくなっているのです。

それでも、バイオプラスチックを工業レベルで生産できる工場もすでに存在しており、バイオマス資源への切り替えは次第に広まりつつあります。

周りを見渡せば私たちは、多くのプラスチック製品に囲まれていることが分かります。ペットボトルやコンビニ弁当についてくるスプーンやフォークなど数えてみればキリがありません。

プラスチックによる環境汚染を懸念したアメリカの大手コーヒーチェーンである「スターバックス」はストロー撤廃を徐々に進めていて、2020年までには日本を含む全世界の店舗での完全廃止を目指すと発表しています。

さすがスターバックス、仕事が早いですが、実は日本でも既に紙製のストローへの移行を実施している喫茶店もあるのです。

私たちの日常でも既成のプラスチックを見なくなる日が来るのは、そう遠くないかもしれません。

大活躍。今度は「油を食べるバクテリア」が登場、環境汚染を食い止めるか

reference: phys.org, fnn.jp / written by くらのすけ / edited by Nazology staff

SHARE

TAG

chemistryの関連記事

RELATED ARTICLE